2026 年 161 巻 5 号 p. 326-329
医療系専門職の学部教育の方法として,講義,演習,実習,実技,実験が行われている.講義は,初学の学生にとって新しい基本的な知識や概念を教授する主要な機会となるため,カリキュラムのかなりの部分を占める.講義で得られる基本的な知識や概念を補完するために,演習,実習,実技,実験などの実践的な教育方法が採用されている.同様の教育方法が生理学教育においても実践されている.生理学教育における実習は,実験を通じて講義で取り扱った基礎的な知識や概念の理解を深めることを目的とした実習と,講義で取り扱った基礎知識が臨床現場へ応用できること示すことを目的とした実習の2つに大別することができる.実習は,講義で得た知識の理解を強化し,深化させるが,時間的制約のために実習で取り扱われる項目は講義で取り扱われる項目よりも遥に少ないのが実情である.実習は,単に講義を補完するだけでは有効な教育方法となり得ず,講義と独立した独自の目的を果たすことが望まれる.医療系専門職には科学的思考の基本的なスキルの習得が求められる.科学的思考とは,事実と意見を明確に区別し,論理的推論により事実に基づいて意見を形成することと言える.実習は,この科学的思考を涵養する最良かつ独特な教育方法を与える.この観点で,実習は,単に講義を補完するだけではなく,講義にはない明確な利点を有することになる.実習は,講義で得た知識を強化するだけでなく,科学的思考を涵養する点において重要な教育方法である.