日本薬理学雑誌
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合成タンパク質分解酵素阻害剤E-3123の実験的イヌDICに対する改善効果
風間 睦美小林 国男田原 千枝子宮島 ゆかり遠藤 幸男田中 博之中谷 寿男多治見 公高
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1992 年 100 巻 1 号 p. 47-58

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抄録

汎発性血管内血液凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome:DIC)は,凝固亢進状態を契機として,消耗性止血障害による全身性出血傾向及び末梢循環不全による多臓器障害を主症状とする症候群である.しかして本症候群は重篤な疾患に合併して,患者の予後を著しく不良とする.DICの凝固亢進状態に対しては抗凝固療法が基本であるが,従来用いられてきたヘパリンの外に,我が国ではメシル酸ガベキサート,メシル酸ナファモスタット,アルガトロバンなど,タンパク質分解酵素に対する合成インヒビターが用いられ,基礎的,臨床的有効性が認められている.われわれは合成インヒビターE-3123を用いて,イヌに作成した実験的DICに対する改善効果を,循環動態及び止血学的所見から検討した.すなわちイヌにトロンボプラスチン150単位/kgを30分かけて静注して未治療対照群(第I群:n=4)とし,治療群としては第II群:E-3123 5mg/kg/hr併用群(n=4),第III群:同10mg/kg/hr併用群(n=4),第IV群:メシル酸ガベキサート(GM)6mg/kg/hr併用群(n=4)の計4群を作成した.HR・PaO2・Ca(v)O2・CI・SVIなどの血行動態の指標には何れの群でも有意な変動が認められず,またMPAP,PVRIの変動に対しても有意の改善効果は認められなかった.しかし末梢循環機能を示すlactate,pyruvate/lactateには,治療群で有意ではないが改善傾向が認められた.一方アンチトロンビンIII,プラスミノーゲンには何れの群でも有意の減少が認められず,治療効果の分析はできなかったが,対照群で認められた(1)プロトロンビン時間の延長,(2)血小板数,フィブリノーゲン,α2-プラスミンインヒビターの減少及び(3)フィブリン分解産物の増加などに対しては,t検定及び2元分散分析で,第III群,第IV群に有意の改善効果が認められた.これらの成績から,実験的DICの止血異常に対して,E-3123はGMと同程度の改善効果があると結論された.

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