日本薬理学雑誌
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ガラクトサミン負荷によるラットの肝障害に対する緑茶抽出物の効果
林 真知子山添 寛山口 優国友 勝
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1992 年 100 巻 5 号 p. 391-399

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抄録

ウイルス性肝炎の病態モデルであるラットのD-ガラクトサミン(GalN)誘発肝障害に対する緑茶抽出物の肝機能改善効果について検討した.Wistar系雄性ラットにGalN(700mg/kg,i.p.)を単回投与すると48時間まで劇症肝炎様の症状,すなわち,血清中アスパラギン酸アミノ基転移酵素(GOT),アラニンアミノ基転移酵素(GPT)およびアルカリホスファターゼ(ALP)の各活性の著しい上昇に加え,血清タンパク値,血清コレステロール値および肝ミクロソームP-450値の減少などを呈した.血清中のレシチンコレステロールアシル転移酵素(LCAT)活性はGalN投与8時間後に著しい上昇,24時間以後に著しい低下という興味ある変化を示した.また,肝臓,腎臓,脾臓および副腎の各重量の著しい増加と胸腺重量の減少が認められた.このような肝障害に対し,GalN投与前後に緑茶抽出物50,100,200mg/kgを1日2回,計5回経口投与したところ,血清GOT,GPTおよびALPの著しい上昇が用量依存的に有意に抑制された.また,血清アルブミンおよびコレステロール値の減少も有意に抑制されたが用量依存的ではなかった.GalN投与8時間後にみられるLCAT活性の上昇および48時間後にみられる肝ミクロソームP-450値の減少も抑制される傾向を示した.その他の異常な血清脂質値,血清タンパク値および臓器重量の変化にはほとんど影響がみられなかった.以上のことから緑茶は,肝機能低下を改善する作用を有すると考えられる.

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