日本薬理学雑誌
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タイ産植物Momordica charantiaとPhyllanthus urinaria抽出物の血糖降下作用(第一報)
東野 英明鈴木 有朋田中 康雄Krisana Pootakham
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1992 年 100 巻 5 号 p. 415-421

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抄録

東南アジア地域で広く食用に供されるニガウリ(Momordica charantia: M.c.)は糖尿病の病状を軽くすると伝えられ,コミカンソウ(Phyllanthus urinaria: P.u.)は糖尿病による尿路感染症を治癒させるとの伝承から,タイ国産の両植物の血糖降下作用をラットを用いて調べた.M.c.とP.u.の50%メタノール抽出物は,30mg/kgの経口投与で3時間後にストレプトゾトシン(SZ)処置高血糖ラットの血糖値をそれぞれ25%と24%低下させた,その抽出物より得られたM.c.のエチルエーテル,n-ブタノール,水易溶画分の10mg/kgと30mg/kgの経口投与は,3時間後にそれぞれ18,26,15%と19,34,16%SZ処置ラットの血糖値を低下させた.P.u.のエチルエーテル,n-ブタノール,水易溶の各画分は10mg/kgと30mg/kg投与量でそれぞれ6,23,17%と27,39,25%血糖値を低下させた.ブドウ糖経口負荷試験(1.0g/kg)を試みたところ,両植物のn-ブタノール抽出物の30mg/kgの経口投与は同程度に血糖上昇を遅延させたが,腹腔内へのブドウ糖負荷試験ではM.c.が血糖値上昇抑制作用を示したのに反し,P.u.では全く効果がなかった.したがって,M.c.とP.u.の両植物は,n-ブタノールに可溶性の高い中等度非極性の血糖降下作用物質を含み,その作用機序は,M.c.抽出物ではインスリン様またはインスリンを介して作用(スルフォニル尿素系(SU)剤様)するのに対し,P.u.抽出物では糖代謝の促進作用や腸管でのブドウ糖吸収抑制作用(ビグアナイド系(BG)剤様)であることが示唆された.

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