日本薬理学雑誌
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モルモット消化管に存在するatypical β-アドレナリン受容体の薬理学的解析
堀之内 孝広辻谷 典彦小池 勝夫
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1999 年 114 巻 supplement 号 p. 118-122

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抄録

今回の研究ではモルモット胃底,十二指腸及び回腸において弛緩反応に関与するatypical β-アドレナリン受容体(AR)の薬理学的特徴をカテコラミン(イソプレナリン,ノルアドレナリン及びアドレナリン),β3-AR作用薬(BRL37344及びCGP12177A)及び非選択的β1-,β2-,β3-AR拮抗薬であるブプラノロールを用いて受容体拮抗実験により明らかにした。また,各作用薬に対するブプラノロールのpA2値を比較することによりこれらの組織間に部位差があるかどうか検討した。モルモット胃底,十二指腸及び回腸においてカテコラミン及びβ3-AR作用薬により濃度依存的な弛緩反応が生じ,カテコラミンの効力順位はイソプレナリン>ノルアドレナリン>アドレナリンとなった。この効力順位はラット空腸などのβ3-ARを介した反応で得られる知見と一致した。また,β1-及びβ2-ARを遮断した条件下,カテコラミンの濃度反応曲線は多少右方へ移動したもののカテコラミンの効力順位は変化せず,β3-AR作用薬の濃度反応曲線はほとんど影響を受けなかった。これらの結果はモルモット胃底,十二指腸及び回腸に機能的なatypical β-ARの存在を示唆している。さらに,同じくβ1-及びβ2-ARを遮断した条件下,カテコラミン及びβ3-AR作用薬の濃度反応曲線はブプラノロールにより濃度依存的に右方へ移動し,Schild plotのslopeは1と有意な差は認められなかった。また,各作用薬に対するブプラノロールのpA2値はモルモット胃底,十二指腸及び回腸の間において有意な差はなかったことからこれらの組織に存在するatypical β-ARは薬理学的に同一であり,部位差はないと考えられた。

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