日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
Monoamine Oxidaseに関する研究(第26報) 種々alcoho1類のmitochondria構造におよぼす影響とMAO活性の変動について特にその電子顕微鏡的研究
政本 久美子荒井 裕一朗黒岩 幸雄黒沢 安彦安原 一庄 貞行
著者情報
ジャーナル フリー

1974 年 70 巻 6 号 p. 747-756

詳細
抄録

牛肝臓より作製した5つのmonoamine oxidase(MAO)標品,すなわちhomogenate-MAO,mitochondria-MAO,可溶化抽出したMAO-1,MAO-2,本来可溶性で存在するS-MAOに対するethyl alcohol,butyl alcoholの影響を検討した.また,これら薬物のmitochondriaにおよぼす形態的な変化を電子顕微鏡で観察した.牛肝臓中のこれら5つの標品に対してethyl alcoholは0.1~1%濃度でそれらの活性を増加させた.また,10%以上の高濃度では活性阻害が認められた.ラット肝臓mitochondria MAOに対してbutyl alcohol,ethyl alcoholの影響を検討した結果,butyl alcoholはその0.01~10%で著明な活性阻害を示した.ethyl alcoholは0.1~10%で活性の促進作用を示し,特にその10%でその作用は最も著明であった.ラット肝臓より分離したmitochondriaに対し,butyl alcohol,ethyl alcoholを作用させた後オスミウム酸で固定して電顕標本を作製し,その形態変化を電子顕微鏡で検討した.その結果,両者ともあきらかな形態の変化を認めた.butyl alcohol0.01%では対照のmitochondria像とほとんど相違は認められなかったが,0.1%では大きさの均一性がなくなり,輪郭が失なわれ,cristae,matrixの消失が認められた.1%ではさらにmatrixの消失が著るしく,個々の輪郭膜が接近または結合していた.10%ではmitochondriaの構造は全く認められなくなった.一方,ethyl alcoholでは前者とは異なる形態変化を呈し,外膜,内膜の存在が比較的よく観察され,内部のcristae,matrixの消失もわずかであった.0.1%ではさまざまな形状のmitochondria像が認められた.10%ではmitochondriaの膨化,cristaeの膨化,matrixの変化が認められるとともに,外膜の剥離状態が著るしく観察され,中には外膜が完全に剥離し,外膜のみが小胞状に存在する像も観察された.40%ではかろうじてmitochondriaの外形を保ち,内部matrixの著るしい凝集,空胞化が認められた.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top