抄録
心筋中taurineの生理的意義についての研究の一環として,ouabain不整脈の発現と心筋内taurine濃度の変動につき検討を加え,若干の知見を得た.強心配糖体にたいし抵抗性の強いラットでは,心筋内taurine量は,強心配糖体にたいして感受性の高いモルモットの場合のそれに比し高濃度であった.Ouabainをラット静脈内に持続注入すると不整脈をおこしたが,taurineの注入を併用すると不整脈は誘発されなかった.Ouabain不整脈の発現に伴い,心筋taurine量は減じ,この両者は,propranolol前処置により防止された.しかしながら,一度ouabainでPR間隔が延長(約50%)したラットについては,その後の心筋taurine量の増加とPR間隔延長を改善する作用との聞には,相関関係はみとめられなかった.Taurineの抗ouabain作用には,ouabainによるtotal-ATPase活性抑制作用は関与しなかった.抗Ouabain不整脈作用発現における心筋内taurineの存在形式について考察を加えた.