日本薬理学雑誌
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71 巻, 1 号
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  • 東海林 徹, 桜田 忍, 木皿 憲佐
    1975 年 71 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Metaraminol(MA)脳内投与時の中枢一般薬理作用を検討し,次の成績が得られた.1)MA40~160μg投与6時間後に自発運動量に対する著明な抑制効果が認められ,光束法,open-field法および回転篭法で求めた自発運動量の50%抑制用量はそれぞれ33.0(17.4~62,7)μg,42.0(21.8~82.9)μgおよび14.5(7.8~26.8)μgであった.2)自発運動量抑制用量でptosis,catalepsyの発現も認められた.3)MA1.25~10μg投与6時間後に著明な馴化作用が認められ,そのED50は2.9(1.2~6.5)μgであった.4)条件行動に対してはMA40~160μg投与6時間後にCRの抑制が認められ,そのED50は50.0(29~85)μgであった.しかし,URの抑制は160μg投与で30%認められたにすぎなかった.5)マウスのrotarod test における協調運動抑制作用のED50は175(112.9~271.3)μgであった.6)Pentobarbital Na睡眠増強作用は弱く,抗pentetrazol作用,酢酸stretching抑制作用は認められなかった.7)慢性電極を植込んだネコの脳波に対してMA脳室内投与10分頃よりarousal patternが多くなり30分頃まで続いた.また,MA投与によってEMGには変化は認められなかったが,EOGはsaline投与時と比較して眼球運動が著しいことが認められた.
  • 東海林 徹, 桜田 忍, 木皿 憲佐
    1975 年 71 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Metaraminol(MA)脳内投与によるマウスの行動変化について検討を加え,次のような成績が得られた.1)MA脳内投与によって光束法およびopen-field testでとらえた自発運動量は投与直後に増加,後,減少するという2相性を示した,2)MA160μg脳内投与30分後,脳内CAに変動は認められなかったが,6時間後,脳内CAの著明な減少が認められた.3)Reserpineおよび6-hydroxydopamine(6-OHDA)による自発運動量減少作用に対してMAは拮抗した.この拮抗はreserpine処理群に対してよりも,6-OHDA処理群に対しての方が強かった.4)Reserpineによるptosis,catalepsyに対してMAは拮抗作用を示した.5)MA投与6時間後に抗methalnphetamine作用が認められた.
  • 平松 正彦, 吉田 洋一, 江田 昭英
    1975 年 71 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症に対して明らかな治療効果を示す家畜前立腺抽出物(PE)の膀胱に対する作用について検討し,以下の成績を得た.1)PEは摘出ラットおよびイヌ膀胱筋に対して自動運動の充進を伴う収縮を示した.これらの収縮はatropine抵抗性であった.2)摘出モルモット回腸に対してもPEはatropine抵抗性の収縮を示した.また,その収縮はpapaverineによって緩解したが,BaCl2による収縮に比して高い回復率を示した.3)摘出モルモット膀胱はPEによってatropine抵抗性の自動運動の充進を伴う持続的な内圧の上昇を示した.また,家兎膀胱に対しても内圧の上昇を示し,この作用はin situでもみられた.4)PEはモルモット膀胱括約筋を拡張し,その作用はAChまたはmethacholineの作用にほぼ匹適する強さを示した.
  • 秦 多恵子, 尾陰 多津子, 三宅 義雅, 喜多 富太郎
    1975 年 71 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    dd系マウスに対し,1日の時間を4時間毎に分け,2,6,10,14,18または22時にそれぞれ薬物を投与し,経時的に観察しながら72時間までの累積致死率を調べ,以下の成績を得た.1)中枢興奮薬すなわちN-methyl D-aspartic acid,picrotoxin,pentetrazolまたはstrychnine-H2SO4では22時に投与した場合に致死率が最も低かった.また2,10,18時に投与した場合には致死率の高い場合が多く,致死率の高い山は少なくも2つ以上認められた.2)中枢抑制薬すなわちchlorpromazineおよびNa-methylhexabitalでは10時投与群が最も致死率が低かった.また致死率の高い山は1つで,それは14時または18時であった.以上の成績から致死率の最も低い投与時刻を中枢興奮薬例えばN-methyl D-aspartic acidと,中枢抑制薬例えばchlorpromazineについて比較したところ前者では22時,後者では10時であり,この両者の間に12時間のずれが見られた.また抑制薬で致死率の最も低かった10時には興奮薬では高く,おおむね対比的な成績であった.
  • 柳浦 才三, 石川 滋
    1975 年 71 巻 1 号 p. 39-51
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    モルモットの摘出胆のう,総胆管,Oddi筋にはα収縮性受容体が存し,消化管とは異なった生理機能臓器である.胆のうは不可逆的α遮断薬であるdibenamineの比較的低用量において,α作用が消失逆転することから,α受容体量は少ない.また,経壁刺激反応からはcholine作働性収縮が顕著に優位で,このcholine作働性収縮に対してadrenaline作働性α作用が神経末端に抑制支配を行なうことが重要と思われるが,adrenaline作働性の直接支配も無視出来ない.胆のう壁はtyramine作用において,tyramine遊離型の内因性catecholamineをほとんど含有していない.しかし5-HTによって遊離されるcatecholamineを含有する.総胆管は自動運動を持ち,α収縮性受容体とβ弛緩性受容体があり,その収縮,弛緩力によって胆道内圧調節と胆汁排出上に積極的に関与すると考えられた.モルモットOddi筋のα受容体は収縮性で,十二指腸のそれと異なることから,Oddi筋は十二指腸より独立していると言える.一方,ウサギの場合,摘出胆のうは反応性に貧しく,神経支配機能を充分検討できなかったが,β弛緩性受容体の存在が推論された.総胆管標本は,α収縮性受容体,β弛緩性受容体が存し,また,choline作働性収縮支配,adrenaline作働性収縮,弛緩支配があり,自動運動も有することから,胆道内圧調節に積極的に関与すると思われる.しかしOddi筋はα,β両受容体とも弛緩性であり,摘出,生体位とも十二指腸類似であった.神経支配もcholine作働性収縮とatropine抵抗性収縮支配,非adrenaline作働性弛緩支配がみられ,十二指腸と質的に同じであった.それ故,ウサギOddi筋はadrenaline受容体,自律神経支配様式からは,十二指腸よりの独立性を支持出来ない.またウサギにおけるこれら神経支配機構は,胆汁排出上の重要因子ではなく,主にcholecystokininなどのホルモン性調節が重要なものであろう.
  • 藤本 征五, 岩田 平太郎
    1975 年 71 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    心筋中taurineの生理的意義についての研究の一環として,ouabain不整脈の発現と心筋内taurine濃度の変動につき検討を加え,若干の知見を得た.強心配糖体にたいし抵抗性の強いラットでは,心筋内taurine量は,強心配糖体にたいして感受性の高いモルモットの場合のそれに比し高濃度であった.Ouabainをラット静脈内に持続注入すると不整脈をおこしたが,taurineの注入を併用すると不整脈は誘発されなかった.Ouabain不整脈の発現に伴い,心筋taurine量は減じ,この両者は,propranolol前処置により防止された.しかしながら,一度ouabainでPR間隔が延長(約50%)したラットについては,その後の心筋taurine量の増加とPR間隔延長を改善する作用との聞には,相関関係はみとめられなかった.Taurineの抗ouabain作用には,ouabainによるtotal-ATPase活性抑制作用は関与しなかった.抗Ouabain不整脈作用発現における心筋内taurineの存在形式について考察を加えた.
  • 小澤 光, 相原 弘和, 笹島 道忠, 田中 一郎
    1975 年 71 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットの腸管膜動脈,後肢動脈を自己血で定流量潅流し,dopamineの動脈内投与による効果をnorepinephrine,phenylephrine,tyramineの効果と比較検討した.両血管系においてnorepinephrine,phenylephrineの血管収縮の最大反応はほぼ同等で,tyramine,dopamineの効果は前二者よりはるかに弱かった.Cocaine処理によってnorepinephrineの効果は増強され,tyramineの効果は抑制されたが,dopamineの効果は変化しなかった.α-methyl-p-tyrosine処理ではnorepinephrine,dopamineの効果は変化せず,tyramineの効果は抑制された.Reserpine処理ではnorepinephrineの効果は変化せず,tyramineの効果は抑制されたが,dopamineの効果は増強された.腸管膜動脈ではdopamineはphenoxybenzamine処理後は血管拡張反応を示し,これはpropranolol,atropine,diphen-hydramineで抑制されず,haloperidolで抑制された事から,血管拡張性のdopamine受容体が考えられる.以上の結果より,dopamineはいわゆる“mixed type”の交感神経興奮性アミソとして末梢血管系でも作用し,reserpineによる増強作用は神経後膜側と,dopamine-β-hydroxylaseの活性上昇によるものと考えられる.
  • 桶川 忠夫, 愛下 秀毅, 穐本 晃, 槙田 敏雄, 中井 秀明, 川崎 晃義, 太田 克美, 柴田 邦治, 中尾 恵哉
    1975 年 71 巻 1 号 p. 71-87
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    新しい蛋白分解酵素阻害剤であるFOYの一般薬理作用について検討し,次のような結果を得た.1)ウサギ,イヌの急性一般症状では,自発運動の抑制,運動失調,チアノーゼ,虚脱,瞳孔散:大等がみられ死亡例は呼吸麻痺で死亡した.2)中枢神経系に対する作用はほとんど認められなかった.3)イヌの血圧に対して1mg/kg以上の投与量で下降作用がみられた.この血圧下降作用は,atropineおよびhexamethoniumの前処置によっても影響されなかった.4)ウサギの心電図に対して30mg/kg以下の量では,ほとんど影響をおよぼさなかった.5)ウサギ回腸,モルモット回腸,ラヅト子宮の自動運動に対して10-6~10-4g/mlで著明に抑制した.モルモット摘出輸精管に対して神経刺激,noradrenalineおよびBaCl2による収縮を抑制した.6)ラット坐骨神経腓腹筋標本に対しては,作用は認められなかった.7)ウサギの血管透過性尤進作用を認め,ラット足浮腫法による起炎性を認めた.8)ウサギの眼粘膜に対して強い刺激作用を示した.9)0.2%液以上で浸潤麻酔作用を示した.
  • 愛下 秀毅, 桶川 忠夫, 穐本 晃, 槙田 敏雄, 清水 浩, 阪口 喜美子, 小島 正紀
    1975 年 71 巻 1 号 p. 89-99
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Kinin生成系および線溶活性系に対するFOYの阻害効果を既知の阻害剤と比較検討した.1)FOYは10-4g/mlでtrypsinの,10-3g/mlでpancreas kallikreinおよびplasma kallikreil1のkinin生成作用を完全に阻害した.2)Trasylolはpancreas kallikreinに対しては100KIU/ml,Plasma kallikreinに対しては300KIU/mlでそのkinin生成作用を完全に阻害したが,trypsinに対しては700KIU/mlを必要とした.3)soybean trypsin inhibitorはtrypsinに対しては5×10-4g/mlで,Plasma kallikreinに対しては10-4g/mlでkinin生成作用を100%阻害したが,pancreas kallikreinに対しては10-2g/mlの高濃度でも阻害しなかった.4)ラット後肢下潅流実験で,後肢を46°に加温することによって0.2~1.0ng/ml BK相当量のkinin様物質が生成された.そして,α-chymotrypsinとのincubationで生成されたkinin様物質のラット子宮収縮作用は完全に消失した.5)FOY10~100μg/ml含有Tyrode液で潅流すると,kinin様物質の生成は30~100%阻害された.Trasylol 1,000KIU/mlでは60~90%阻害された.しかし,FOY,Trasylolとも静脈内投与では全く阻害作用を示さなかった.6)イヌにおいてHs30mlとSK100,000unit投与で血中のPlasminの活性化および出血傾向の増大を認めた.7)FOY100mg/kg/150minではSK投与60分後から強い抗線溶作用を示した.また,t-AMCHAも100mg/kg/150minの投与で抗線溶作用を示した.8)以上のことから,FOYにはkinin生成阻害効果および線溶活性阻害効果のあることが認められた。
  • 片野 由美
    1975 年 71 巻 1 号 p. 101-108
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    丸ごとの動物にtwo compartment modelの考えを適用し,強心ステロイドの持続注入によって得られる実測値から理論式に従って最小強心量,最小不整脈量,最:小致死量,強心ステロイドの心筋へのとり込まれ易さの指標K1および分解消失され易さの指標K2の算出を試みた.強心配糖体の代表としてg-strophanthin,digoxin,ゲニン体の代表としてdigoxigeninを用いた.実験の結果,1)作用の強さはg-strophanthin>digoxin>digoxigeninの順である事,心筋へのとり込まれ易さの指標K1はdigoxigenin>g-strophanthin>digoxinの順に小さくなる事,分解消失の速さの指標K2はdigoxigenin>digoxin>g-strophanthinの順である事がわかった.不整脈と強心量との開きで見た安全域はdigoxin>g-strophanthin>digoxigeninの順である事,致死量と強心量との開きで見た安全域はg-strophanthin>digoxin>digoxigeninの順である事がわかった.以上の結果から,ゲニン体は配糖体に比し心筋へとり込まれ易いが,心筋からの消失も速いこと,また作用が弱い事,安全域が狭い事が結論された。2)最小強心量,最小不整脈量,最小致死量は,心肺標本で得られた値とほとんど完全に一致し,心筋内のある部位に一定量の強心ステロイドが蓄積すると特定の作用が現われるという心肺標本での結論がさらに支持された.また,作用部位へのとり込まれ易さの指標の比較から,強心作用と不整脈ないし致死作用とは,作用発現の場が異なるものと結論されたが,これも心肺標本の結果とよく合致している.
  • 鈴木 武彦, 橋川 敏子, 高野 静子, 林 敦子
    1975 年 71 巻 1 号 p. 109-122
    発行日: 1975年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット,モルモット,兎の平滑筋に対するPGE1(prostaglandin E1)の作用,ならびに,これらの臓器に対する5HT(serotonin),ACh(acetylcholine),Adr(adrenaline)の作用におよぼすPGE1の影響をしらべ,次の成績を得た.1)ラットの摘出小腸,胃,子宮;モルモットの摘出小腸,子宮;兎の摘出小腸,子宮に対し,PGE1はACh,5HTと同様にこれを収縮させた。ラット胃条片,モルモヅト子宮はPGE1に敏感に反応し,その閾値は10-10g/mlであった.2)小腸および胃においては,ACh,5HTの収縮作用に対しPGE1は増強作用があっても軽度であったが,モルモット子宮においては著しい増強作用がみられた.3)モルモット気管,兎気管に対しては,PGE1 10-9~5×10-7g/ml単独ではほとんど作用を現わさないが,AChや5HTの前処置により収縮した気管は,PGE1により,ある程度緩解した.しかし,その作用はAdrに劣っていた.4)気管,胃,腸,子宮において,特異的抗Adr作用は,これを認めることが出来なかった.5)ラット摘出子宮を用いての実験によると脱分極後,NaN3,dinitrophenol,脱カルシウム後,PGE1はAChと全く同様に反応した.PGE1の作用発現にはCa++が不可欠であった点もAChと同様である.6)ラット手術後の腸管麻痺に対して,PGE1(10μg/100g腹腔内注射,または0.1,1μg/100g静注)はこれを改善させる作用を示さなかった.兎にPGE1 10μg/kgを静注した場合,注射直後,一過性の著しい腸運動の抑制がみられた.7)PGE1によるACh作用の増強現象は骨格筋(かえるの腹直筋)でもみられた。その作用はphysostigmineに匹敵した.しかし,PGE1にはcholinesterase阻止作用はみとめられなかった.また骨格筋のACh増強作用のためには平滑筋のそれよりも高濃度のPGE1を必要とした.
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