ラット,モルモット,兎の平滑筋に対するPGE
1(prostaglandin E
1)の作用,ならびに,これらの臓器に対する5HT(serotonin),ACh(acetylcholine),Adr(adrenaline)の作用におよぼすPGE
1の影響をしらべ,次の成績を得た.1)ラットの摘出小腸,胃,子宮;モルモットの摘出小腸,子宮;兎の摘出小腸,子宮に対し,PGE
1はACh,5HTと同様にこれを収縮させた。ラット胃条片,モルモヅト子宮はPGE
1に敏感に反応し,その閾値は10
-10g/mlであった.2)小腸および胃においては,ACh,5HTの収縮作用に対しPGE
1は増強作用があっても軽度であったが,モルモット子宮においては著しい増強作用がみられた.3)モルモット気管,兎気管に対しては,PGE
1 10
-9~5×10
-7g/ml単独ではほとんど作用を現わさないが,AChや5HTの前処置により収縮した気管は,PGE
1により,ある程度緩解した.しかし,その作用はAdrに劣っていた.4)気管,胃,腸,子宮において,特異的抗Adr作用は,これを認めることが出来なかった.5)ラット摘出子宮を用いての実験によると脱分極後,NaN
3,dinitrophenol,脱カルシウム後,PGE
1はAChと全く同様に反応した.PGE
1の作用発現にはCa
++が不可欠であった点もAChと同様である.6)ラット手術後の腸管麻痺に対して,PGE
1(10μg/100g腹腔内注射,または0.1,1μg/100g静注)はこれを改善させる作用を示さなかった.兎にPGE
1 10μg/kgを静注した場合,注射直後,一過性の著しい腸運動の抑制がみられた.7)PGE
1によるACh作用の増強現象は骨格筋(かえるの腹直筋)でもみられた。その作用はphysostigmineに匹敵した.しかし,PGE
1にはcholinesterase阻止作用はみとめられなかった.また骨格筋のACh増強作用のためには平滑筋のそれよりも高濃度のPGE
1を必要とした.
抄録全体を表示