日本薬理学雑誌
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ラット脳におけるNorepinephrineとDopamine代謝に対するLithium塩の作用
野津 隆司古川 達雄
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1976 年 72 巻 5 号 p. 619-625

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抄録
Lithium(Li)塩の中枢作用機作検索のため,ラットにlithium chloride(LiCl)を腹腔内に急性投与(2.4mEq/kg×1,1.2mEq/kg×2,3時間)および亜急性投与(2.5mEq/kg×2/日,4,5日)して,open field法による自発運動量測定,蛍光定量による脳内norepinephrine(NE),dopamine(DA),serotonin(5HT)の定常レベル測定を行うとともに14C-NEまたは14C-DAを側脳室内に投与して脳内NEとDAの代謝を調べた.その結果,Licl急性および亜急性投与群とも自発運動量が抑制されたが,その時脳内NE,DA,5HTの定常レベルはいずれも変化を受けなかった.一方,NE代謝において,LiCl急性投与では,対照のsodium chloride(NaCl)群に比較して総放射能および未変化体とその代謝物のいずれにも有意な変化を認めなかったが,LiCl亜急性投与により,脱アミノ体が有意に増加した.またDA代謝においては,LiCl急性投与により,NaCl群に比較して総放射能,未変化体,normetanephrineには変化がなかったが脱アミノ体が減少し,O-メチル脱アミノ体は増加傾向を示した.LiCl亜急性投与では,脱アミノ体の減少傾向とO-メチル脱アミノ体の増加を認めた。従ってLiは亜急性投与でNE代謝においてmonoamine oxidasc(MAO)代謝物を増加させ,またDA代謝こおいてもMAO代謝系に影響を与え,これら脳内catecholamine代謝に対する作用が,Liの行動抑制作用となんらかの関連を有するものと思われる.
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