日本薬理学雑誌
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Ephedrineの血圧反転機序(第1報)
斉藤 晴夫
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1977 年 73 巻 1 号 p. 73-82

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抄録

Urethane麻酔ラットで認められたl-ephedrine(l-EPH)投与後のd-ephedrine(d-EPH)投与による血圧反転の機序を解明するに先だち,基礎的な検討をおこなった.d-,dl-およびl-EPHの単独あるいは相互の2回連続投与ではl-およびdl-EPH投与後のd-EPHにのみ血圧反転が発現した.以後はl-およびd-EPHについて検討したが,血圧反転の発現量はd-EPH10mglkgに対して,l-EPHの前投与量は2mg/kg以上であり,l-EPH lOmg/kgの前投与に対してはd-EPH 1mg/kg以上であった.また投与間隔はl-EPH投与60分後までd-EPHの血圧反転が認められた.この反転は雌雄のイヌおよびネコでも観察きれ,性差および種差は認められなかった.Atropine, hexamethonium, diphcnhydramine, vagotomyおよび脱血による低血圧によって消失しなかったが,phenQxybenzamineによって消失した.Epinephrineのα-作用およびtyramineの間接的α-作用はd-およびl-EPHで抑制されたが,いずれもl-EPHがd-EPHより強かった.一方イヌ摘出血管において,epinephrineによる収縮に対してd-およびl-EPHはいずれも前処理および収縮peak時の適用によって,抗epinephrine作用および弛緩が認められ,d-EPHがl-EPHより強かった.またイヌ後肢血流量はd-およびlEPHのそれぞれの動脈内投与によって増加したが,d-EPHの血圧下降時,すなわち血圧反転時に最も増大した.これらの結果および先に認めたreserpineおよびdibenamincによる血圧反転の消失およびβ-blockerで消失しないことから,d-EPHの血圧反転の主因は生体内遊離物質による間接的な作用であるが,Ach. His. およびcatecholamineでなく,抗5-HT作用を有するdibenamineおよびphenoxybenzamineで消失することから5-HTの可能性が示唆された.また血圧反転の一部にはd-EPHの直接的な末梢血管の拡張が関与していると考えられる.

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