日本薬理学雑誌
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73 巻, 1 号
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  • 奥泉 清子, 栗原 久, 小川 治克, 田所 作太郎
    1977 年 73 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    定時間隔食餌強化スケジュール(FI 90秒)の下でラットにレバーを押させ間欠的に食餌錠を獲得せしめると,摂餌後その都度post-pellet licking burstと呼ばれるはげしい飲水を繰り返し,schedule-induced polydipsiaの状態となる.充分に訓練するとレバー押し及び飲水行動は一定する.このように訓練した5匹の成熟雄ラットを用い,1セッション2時間とし,水道水からいろいろの濃度の甘味料(蔗糖,saccharin,aspartameおよびNa cyclamate)溶液あるいは食塩溶液に置換した時の影響を,飲水口への口づけ回数およびレバー押し数(FL-反応)の変化を指標として追及した.0.3,1.0,4.0及び16%の蔗糖液置換後20分間の口づけ回数は濃度に比例して増加し,この時のFI‐反応は16%の場合のみ著明に抑制された.0.3~4.0%溶液ではその後2時間にわたり口づけ回数の増加が維持されたが,FI‐反応には著変が認められなかった.しかし16%溶液ではその後急激かつ著明な口づけ行動の抑制が生じ,FI‐反応も抑制される傾向を示した.0.03,0.1,0.4及び1.6%saccharin溶液では,1.6%を除き濃度とは関係なくすべて口づけ回数及び溶液総摂取量の増加が生じた.しかし1.6%は有意に忌避された.FI‐反応にはすべての濃度で変化が認められなかった.0.1~0.8%のaspartame溶液ではいずれも水道水の場合に比し著変がなく,ラットが水道水との識別を行なっているとは思えなかった.Cyclamate溶液の場合0.05~0.2%ではいずれの行動も変化を示さなかったが,0.4%になると忌避する傾向が生じた.食塩水0.8%以下ではいずれも変化がなかったが,1.6%の場合口づけ回数は著明に抑制された.しかしFI‐反応には変化がなかった.すなわち甘味に対するラットの嗜好はヒトの場合とかなり異なることが推測されるので,人工甘味料の薬理学的,中毒学的検討にはラットの嗜好特性を十分考慮する必要があろう.
  • 東海林 徹, 桜田 忍, 木皿 憲佐
    1977 年 73 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Metaraminol(MA)をマウス脳内に直接投与すると二相性作用がみられるが,今回は第一相目の自発運動量元進作用について検討を加えた.その結果,1)MA40,80および160μgをマウス脳内に投与すると,投与30分後から自発運動量は増加し,90分後にsaline群まで回復した.2)Isocarboxazide(lso)10mg/kgをMA投与1時間前に処理して自発運動量を測定すると,MA40および80μg投与で,saline処理群と比較して自発運動量の有意な増加が認められた.Iso-MAで引き起こされた自発運動量の増加はMA単独群と比較しても有意であった.さらにIso 30mg/kg前処理群において自発運動量はIso 1Omg/kg前処理後にMAを投与した群と比較しても有意に増加した.3)α-Methyl-P-tyrosine(α-MT)125mglkgを3時間毎に2回処理した場合のMAの作用を検討すると,α-MT-MA投与群ではα-MT-saline群と比較し自発運動量の有意な増加がみられたが,tween-saline群と比較すると減少したままであった.4)α-MT投与後L-DOPA400mg/kgを処理し,MAを投与すると用いたいずれの用量でもtwecn-twcen-MA投与群の自発運動量まで回復することが認められた.5)diethyl dithio carbamate (DDC) 700m/kg処理後MAを投与するとDDC-saline群と比較して自発運動量の有意な増加が認められた.しかし,DDC-MA群とtween-MA群との間の有意な差は認められなかった.6)MAの自発運動量充進作用はhalopcrido1によって抑制された.以上の結果より,MAの有する自発運動量元進作用は脳内catccholamine(CA)を介して発揮され,noradrenalinc(NA)よりdopamine(DA)が重要な役割を果している可能性が示唆される.
  • 山本 慧
    1977 年 73 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Beclomethasone-17,21-dipropionate(beclomethasone-dipropionate)は,その大部分が,血中または,組織中にて速やかにbeclomethasone-17-monopropionate(beclomethason-e-monopropionate)さらには,beclomethasoneに変換され,おそらくは,beclomethasoneの形でglucocorcoid作用を発揮すると考えられる.Beclomethasoneのglucocorcoidとしての活性は,視床下部・下垂体・副腎皮質抑制作用および肝tyrosineamino transferase誘導作用に関し検討した結果,いずれもdexamethasoneの約1/10もしくは,それ以下であることが示唆された.Beclomethasoneのglucorticoid作用が,dexamethasoneに比し弱い理由として,1)beclomethasoneの体内における代謝が,bexamethasoneに比し速いこと.2)標的組織でdexamethasone glucocorticoidと結合したのち,receptor steroid複合体として核へ移行する量が,dexamethasoneに比しかなり少ない(1/10もしくは,それ以下)ことの二点が考えられた.
  • 若林 勝夫
    1977 年 73 巻 1 号 p. 37-50
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    水溶性造影剤N-methylglucamine iothalamate(NMGI)をFeldbergの変法によりイヌの脳実質内に1mlの用量で注射すれば,薬物は円状に拡散され徐々に深部に侵入し,そこから小突起が出て,突然側脳室の中央部後方に侵入し,まず後角および下角,つぎに前角に移行し,第3脳室,中脳水道および第4脳室へと拡散した.この現象は,X線テレビジョンおよび16mmシネカメラにより鮮明に写し出された.小動物の脳内注射によっても,NMGIが脳実質から拡散され直ちに側脳室に移行する映像が,シネフィルム撮影により写し出しえた.しかしイヌで上と同量の造影剤をクモ膜下腔に注入しても側脳室の明らかな造影はえられなかった.131IにてラベルしたNMGIをイヌ脳の3部位(側脳室,脳実質およびクモ膜下腔)にそれぞれ適用して,放射活性の脳から末梢(心)に移行する適用3部位による差違を調べてみた.放射活性は頭部ならびに心臓側に置いた2個のシンチレーションデテクターにより測定された.脳から心への移行による放射活性の減衰は,3部位投与によってそれぞれ特有なパターンを示した.脳内に適用された造影剤の運命に関してNMGI適用および131I-NMGI適用の両実験によって大体同様な結果がえられた.またこの薬物は臨床応用のさいときに痙攣発作を惹起するアドバース反応を起こすが,イヌを用いた実験により,側脳室に注入された場合には間代性痙攣を全く起こさないが,脳実質内に注入された場合には起こすことがわかった.
  • 小林 雅文, 河村 康二, 後藤 康仁, 佐野 久, 平石 清治, 松浦 実, 水野 公之, 寺風 康利
    1977 年 73 巻 1 号 p. 51-61
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    集団および隔離飼育下の雄性ハツカネズミにL-DOPA(25mg/kg),DDC(75mg/kg),reserpine(0.1mg/kg)の各単独投与およびL-DOPAとreserphle,L-DOPAとDDCの併用長期投与(i.p.)を行ない,攻撃行動,脳内noradrenaline levelおよびtyramine uptakeにおよぼす効果を観察した.その結果,攻撃行動の発現は全群を通じて隔離飼育2週目からみられ,その後上昇をつづけ3~4週にかけてpeakに達し,その後いったん下降(あるいは漸増)し,再び6~7週にかけて上昇を開始した.この最初のpeakではL-DOPA単独投与群,reserpine単独投与群,L-DOPA+reserpine併用群が最も高い値を示し,その後のpeakではL-DOPA+DDC併用群が最も高い値を示した.このとき前記3群の値は対照群(生理食塩液投与群)を下まわった.飼育最終週の攻撃行動測定時における各群のin vitroにおける脳tyralnine uptakeは,L-DOPA+reserpine群,L-DOPA+DDC群で著明にたかまっていた,この時の脳内noradrenaline levelは,対照群のそれとの比較においてL-DOPA,reserpineの各単独群,L-DOPA+reserpine群に有意な低下が認められた.なお全群に共通して薬物連用による全身疲慮はみられなかった.
  • 吉田 稔, 西尾 晃, 加納 晴三郎
    1977 年 73 巻 1 号 p. 63-71
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    白血球性発熱物質(LP)は細菌性発熱物質による発熱作用の媒体と考えられ,in vitroで多核白血球(PMNL)の培養上清より粗製白血球性発熱物質を得ることができる.しかし,炎症反応の担手であるPMNLはさまざまな活性物質の遊離がみとめられ,発熱反応に随伴する末梢血管色素透過性因子(透過性因子)もその一つである.著者らはin vitroでPMNLの培養上清に両因子が産出遊離されることを認め,その条件と二,三の物性を比較検討し,さらに,分離を試み,以下の成績を得た.1)透過性因子,発熱柱因子ともにPMNLの培養上清に遊離され,前者は104cells/mlより後者は106cells/mlより血球数に応じてFL-3,PF-3が上昇した.2)両者の活性に対する熱抵抗性は発熱因子が弱く,56°C 30minで失活し,透過性因子は比較的安定である.3)粗製LP(PMNL培養上清)をBiogel P-150でゲルろ過を行うとき蛋白は2っのpeakを示し,前者のFI-3が大きく,PF-3はほとんどすべての分画に存在した.4)FI-3,PF-3の比活性をとるとFI-3の比活性のpeakは分子量6.7×104の附近にあり,PF-3の比活性のpcakは分子量1.25×104附近に認められた.5)透過性因子は他の炎症媒体としてのヒスタミンおよびセロトニンと異なりCypropheptitdineによってその効果は抑制をうけなかった.
  • 斉藤 晴夫
    1977 年 73 巻 1 号 p. 73-82
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Urethane麻酔ラットで認められたl-ephedrine(l-EPH)投与後のd-ephedrine(d-EPH)投与による血圧反転の機序を解明するに先だち,基礎的な検討をおこなった.d-,dl-およびl-EPHの単独あるいは相互の2回連続投与ではl-およびdl-EPH投与後のd-EPHにのみ血圧反転が発現した.以後はl-およびd-EPHについて検討したが,血圧反転の発現量はd-EPH10mglkgに対して,l-EPHの前投与量は2mg/kg以上であり,l-EPH lOmg/kgの前投与に対してはd-EPH 1mg/kg以上であった.また投与間隔はl-EPH投与60分後までd-EPHの血圧反転が認められた.この反転は雌雄のイヌおよびネコでも観察きれ,性差および種差は認められなかった.Atropine, hexamethonium, diphcnhydramine, vagotomyおよび脱血による低血圧によって消失しなかったが,phenQxybenzamineによって消失した.Epinephrineのα-作用およびtyramineの間接的α-作用はd-およびl-EPHで抑制されたが,いずれもl-EPHがd-EPHより強かった.一方イヌ摘出血管において,epinephrineによる収縮に対してd-およびl-EPHはいずれも前処理および収縮peak時の適用によって,抗epinephrine作用および弛緩が認められ,d-EPHがl-EPHより強かった.またイヌ後肢血流量はd-およびlEPHのそれぞれの動脈内投与によって増加したが,d-EPHの血圧下降時,すなわち血圧反転時に最も増大した.これらの結果および先に認めたreserpineおよびdibenamincによる血圧反転の消失およびβ-blockerで消失しないことから,d-EPHの血圧反転の主因は生体内遊離物質による間接的な作用であるが,Ach. His. およびcatecholamineでなく,抗5-HT作用を有するdibenamineおよびphenoxybenzamineで消失することから5-HTの可能性が示唆された.また血圧反転の一部にはd-EPHの直接的な末梢血管の拡張が関与していると考えられる.
  • 斉藤 晴夫
    1977 年 73 巻 1 号 p. 83-92
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    前報においてl-ephedrine(l-EPH)前処置後d-ephedrine(d-EPH)投与により血圧反転を示すが,この際生体内遊離物質として5-HTが介在することを推測し血圧反転機序を明らかにした.d-EPHの血圧反転はchlorpromazine,sulpiride,LSD-25の前処理によって消失したが,cocaineおよびPCPA前処理,迷走神経切断およびspinalラットでは消失しなかった.これらの結果は対照として比較した外因性5-HTの血圧下降の消失と全く一致した.Li2CO3処理ラットにおいては,d-EPHと外因性5-HTの相対的な血圧下降は,controlラットに比べ約4倍に増大した.またL-tryptophaneの大量投与ラットおよびMAOIのiproniazid併用投与ラットにおいて,d-EPHの血圧下降は明らかに増加した.一方d-EPHの血圧反転時の血中5-HTは有意に増加し,l-およびd-EPHによるin vitroにおける血小板からの遊離が認められ,この遊離は比較的短時間に発現した.Reserpineにより間接的昇圧作用が消失したラットにおいて,直接的α-作用はl-EPHがd-EPHより強かった.d-EPHと5-HTおよびl-EPH投与後に再びl-EPHおよびtyramineと5-HTを同時投与した場合l-EPHは血圧上昇を示したが,d-EPHおよびtyramineでは上昇作用が隠蔽され,5-HTの降圧作用が現われた.これらの結果と前報の結果から,血圧反転機序を次のように結論した.1)第1回目のl-EPHの投与によってα-作用が隠蔽され,第2回目投与のd-EPHのα-作用が滅弱する.2)l-EPHの投与によって間接的α-作用が減弱するため,第2回目のd-EPH投与による間接的α-作用は減弱ないしは消失する.3)d-EPHによって血小板から5-HTが遊離する.4)遊離した5-HTの降圧作用が,減弱したd-EPHのα-作用を隠蔽して血圧が下降する.5)この血圧下降にd-EPHの直接的血管拡張作用が関与している.
  • 大滝 由美子, 中西 均, 上田 重郎
    1977 年 73 巻 1 号 p. 93-102
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    (1)犬を用いAdenQsine(Ads)化合物の,2~3臓器血流におよぼす作用を腎を中心として検討した.Ads,AMPの動脈内投与により,上腸間膜動脈血流(MBF),大腿動脈血流(FBF)は一過性に増加したが腎動脈血流(RBF)は,逆に一過性の減少を示した.このRBF低下作用は,後に緩徐なRBFの増加を伴なった.これに対し,ADP,ATPの動脈内投与によっては,これら3部位の血流はいずれも一過牲の増加を示した.冠血管拡張薬dilazep(30μg/kg)をi.v. 投与した後,Ads. AMPのRBF低下作用,MBF,FBF増加作用は有意に増強されたが,ADP,ATPの血流増加作用は全く影響を受けなかった.Theophylline15mg/kgのi.v.投与はAds.AMPの作用を著明に抑制したが,ADP ATPの作用に対しては無効であった.さらに,indomethacin(2~5mg/kg)のi.v.投与は,Ads,AMPのRBF低下作用,MBF,FBF増加作用,ADP,ATPのこれら3者に対する増加作用いずれにも影響を与えなかったが,Ads,AMPによるRBF低下後の一過性血流増加作用は消失した.(2)腎動脈閉塞解除後の反応性血流変動について検討した.閉塞解除後のovershootの次に現われる虚血は閉塞時間の長さに影響され,30秒の閉塞の場合が最大であったが,その次に現われる充血は閉塞時間に影響されなかった.Dilazep(30μg/kg)のi.v.投与は閉塞解除後の反応性虚血を有意に増強し,また充血のpeakに達する時閻を著明に延長した.この反応性虚血はtheophylline 15mg/kgで逆に抑制された.さらにindomethacin(2~5mg/kg)のi.v.投与によって,反応性充血が消失した.これらの事実より,dilazep,theophyllineはAds,AMPの血流に対する作用を特異的に修飾すること,腎動脈閉塞解除後の反応性血流変動には,AdsあるいはAMP,そしてprostagland三nsの関与が示唆された.
  • 中西 均, 大滝 由美子, 上田 重郎, 安部 陽一
    1977 年 73 巻 1 号 p. 103-112
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Secrctinとglucagonには化学構造のみならず薬理作用の上でも類似性がみられている.Glucagonは糸球体游過量の増加およびNa利尿効果のあることが報告されている.そこで本実験では,ブタsecretinの腎機能におよぼす影響について,腎神経を切断したnembutal麻酔犬を用い検討した.Secretinの腎動脈内持続注入(0.2,0.4および1.O unit/kg・min)ならびに静脈内持続注入(0.4,1.0および2.0 unit/kg・min)により,腎血流量はsecrctinの注入量に応じて増加し,同時に輸出入細動脈抵抗値の低下がみられた.また,腎皮質内血流動態では,皮質各部位の血流増加が観察されたが,これを分布率でみるとzone 1で減少,zone 2で変らず,zone 3,4で増加し,secretinにより皮質表層から深層への血流の再分布が認められた.糸球体濾過量,尿量および電解質の尿中への排泄量(UNaV, UKV, Uc1V)には,両投与経路のいつれの場合にも有意の変化は認められなかった.さらに,secretin(1.0 unit/kg・min)とglucagon(0.5μg/kg・min)の腎動脈内併用により,腎血流量の増加および輸出入細動脈抵抗値の低下をきたしたが,その程度はsecretin単独適用時の場合と大差なかった.しかし,glucagon単独注入によりみられた糸球体濾過量,尿量,UNaV,UKV,UClVおよび浸透圧クリアランスの増加程度は明らかに低下した.すなわち,secretinは腎血流量を増し,腎皮質内各部位の輸出入細動脈を共に拡張するが,尿細管に対しては明らかな作用を示さない.従って糸球体濾過量,尿量などにも影響をおよぼさないものと考えられる.さらに,両ペプチドの併用によりglucagonの利尿効果が明らかに減少するのはSeCretinが輸出入細動脈を共に拡張させることが主な原因であると考える.
  • 丸山 裕, 今吉 朋憲, 後藤 一洋, 角部 行信
    1977 年 73 巻 1 号 p. 113-122
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    非ステロイド性抗炎症薬と類似した薬理作用を有する2-(5H-[1]benzopyrano[2,3-b]pyridin-7-yl)propionic acid(Y-8004)について,既知抗炎症薬との併用効果を検討した.ステロイド性抗炎症薬hydrocortisone(HD)との併用で,Y-8004はラットcarragcenin足浮腫およびadjuvant関節炎に対する治療実験において協力作用を示し,indomethacin(IM)をはじめとする既知非ステロイド性抗炎症薬と同様の性質を示した.またadjuvant関節炎に対して,Y-8004はprednisolone治療後の継続代替投与によってもIMと同様にprednisoloneの効果を維持した.一方,非ステロイド性抗炎症薬acetylsalicylic acid(AS)との併用では,その配合比率がAS:Y-8004=25:1の場合,抗carrageenin浮腫作用は拮抗的に弱められたが,Y-8004の配合比率が1/50,1/100と減少するにつれて併用効果は相加あるいは協力的に強められた.同様の傾向はY-8004とIM間でも認められた.また,Y-8004はPBとの併用で相加的に作用し,ASあるいはPBと拮抗的に作用するIMとは若干異なる性質を示した.ラットを用いたY-8004の急性毒性はASあるいはHDとの併用で強められた.しかし,IMの急性毒性はASとの併用で抗carrageenin浮腫作用の場合と同様に拮抗的に弱められ,HDとの併用ではほとんど影響を受けなかった.これらの成績から,Y-8004にステロイド性抗炎症薬の節減および離脱療法の可能性が示唆される.一方,非ステロイド性抗炎症薬の併用では拮抗作用が認められ,臨床評価との関係は明確でないが,今後留意すべき点と考えられる.
  • 福田 英臣, 工藤 佳久, 小野 秀樹, 戸苅 彰史, 田中 佳子, 藤森 千賀子
    1977 年 73 巻 1 号 p. 123-134
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    5-(o-Chlorophenyl)-1-methyl-7-nitro-1, 3-dihydro-2H-1, 4-benzodiazepin-2-one(ID-690)の運動系に対する作用をclonazepam,diazepamおよびnitrazepamの作用と比較した.ID-690はマウスおよびラットの回転円筒法においてclonazepamおよびnitrazepamと同程度の筋弛緩作用を示し,diazepamよりは強力であった.ID-690のthiopenta1催眠時間延長作用もclonazcpamおよびnitrazepamとほぼ同程度であり,diazepamより強力であった.Oxotrclnorine誘発振戦に対して,ID-690,diazepamおよびnitrazepamは同程度の抑制作用を示したが,clonazepamの作用は弱く,1/10程度であった.ID-690の抗痙攣作用はclo-nazepamの作用に類似していた.ラットの脊髄反射電位のうち前根反射電位はこれらbenzo-diazepine類によってほとんど影響をうけなかったが,後根反射電位はこれらの薬物により増大した.ラットの貧血性除脳固縮に対してはこれらの薬物は特徴的な作用を示した.すなわち,持続的な前肢固縮にはほとんど作用せず,後肢に機械的刺激を加えた場合に生じる前肢固縮の相動的増大のみを選択的に抑制した.これらの薬物に神経筋接合部作用はみられなかった.以上より,ID-690はclonazepamより中枢神経系に対する作用の範囲が広く,その作用強度はdiazepamより大きく,nitrazepamとほぼ同程度であることが明らかとされた.
  • 嶋 啓節, 桜田 忍, 木皿 憲佐, 中浜 博
    1977 年 73 巻 1 号 p. 135-142
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Pentazocineの鎮痛作用および痛覚求心路に対する効果をネコを用いて検討した結果次の成績が得られた.1)ツメ付鉗子および熱照射による侵害刺激をネコ後肢に与えたところvocalization,逃避反応,攻撃行動などの情動行動を示した.Pentazodneはこれらの反応を著明に抑制し,その効果は投与後15分から認められ90分以上続いた.2)痛覚求心路に対するpentazocineの作用をtibial nerve刺激による誘発電位を利用して検討したところ,pentazocineはSIおよびCGの誘発電位にはほとんど変化を与えなかったが,pre-central association area,CLおよびSG-Limの誘発電位の振幅を減少させ,特にCLにおいてその減少は著明であった.
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