日本薬理学雑誌
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新向精神薬Benzoctamineの薬理作用 1.中枢作用
高浜 和夫宮田 健加瀬 佳年
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1977 年 73 巻 2 号 p. 151-176

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抄録
N-methyl-9,10-ethanoanthracene-9(10H)-metkylaminehydrochloride(benzoctamine)の静穏作用を中心にした申枢作用をしらべ,その作用態度をchlorpromazine(CPZ),chlordiazePoxide(CDP)と比較した.1)マウスおよびラットの中毒症状は中枢抑制を主とし,特に筋弛緩が著明であった.毒性はマウス皮下でCDPの4.2倍,腹腔内で6.1倍,ラット腹腔内では3.8倍強い.CPZと比較するとそれぞれ1.9倍,同程度,および約1/2の強さであった.2)骨格筋弛緩作用強く,マウスの傾斜板法におけるED50で比較すると,CDPの5.6倍,CPZの約2/3に相当した.ネコの除脳強直を緩解する作用も強い(静注ED50 2.97mg/kg).3)電撃によるマウスの強直姓伸展(TE)を抑制するが,chemoshock抑制作用はみられなかった.4)ラットの識別および非識別条件回避反応をともに抑制した.5)マウスの闘争行動,嗅球除去および隔離飼育によるラットの情動過多を抑制した.これらの効果はCPZのそれの1/4~1/2に相当し,CDPと比較すると,闘争行動抑制は4~5倍強く,情動過多抑制作用は1/2~1であった.6)Amphctamincおよびmorphincで起こしたマウスの運動元進を抑制した.しかし,少量ではamphetamineによる充進を増強する傾向を示した.7)Reserpineによるマウスの体温下降および眼瞼下垂に対して拮抗しなかった.8)CPZと異なり,apomorphineによるイヌの嘔吐を全く抑制しなかった.9)少量では辺縁系の脳波に抑制パターンがあらわれ,この点CDPに類似していた.増量すると,皮質,中脳網様体にも抑制パターンがみられるようになり,CPZの作用に似ている.中脳網様体刺激による脳波覚醒反応に対して抑制的に働き,この点CPZと同一傾向を示した.以上の点からbenzoctamineは薬理学的に従来のmajorおよびminor tranquilizerのどちらの範疇にも属さない筋弛緩作用強力な新しいタイプのtranquilizerと考えられる.
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