日本薬理学雑誌
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73 巻 , 2 号
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  • 乾 淳, 三浦 洋治, 今村 博
    1977 年 73 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    心臓の活動電位に対する薬物の作用を解析するため,活動電位の迅速かつ正確なデジタル測定装置を設計製作し,本装置を用いて,アドレナリンβ-受容体遮断薬であるbufetololの犬Purkinje fibresの活動電位におよぼす影響を観察した.本装置は,垂直軸が二現象以上の陰極線オシロスコープ,デジタルボルトメーター,デジタルインターバルメーターおよび演算増幅器を用いて構成した簡単な回路から成っている.一方の輝線で描記されたブラウン管上の活動電位の静止電位または最大拡張期電位および頂点を他方の輝線で追従し,その追従に要する電位をデジタルボルトメーターで読みとることによって静止電位または最大拡張期電位,overshoot Potentialおよび活動電位の大きさを測定した.また活動電位の50%または90%再分極点の電位と,活動電位とを比較器に導ぴき,その出力電圧として得られる矩形波の持続時間をデジタルィンターバルメーターで計測することによって,50%または90%再分極時間を測定した.本装置による上記測定項目の計測時間は10~15秒で,従来の写真撮影からの測定に比し計測時間が著しく短縮された.また本装置自体の計測誤差は無視し得る程度であった.本装置を用いて,bufetolol (10-6 ?? 10-4M)のPurkinje fibresの活動電位への影響を観察すると,10-5Mで最大拡張期電位の脱分極,overshoot potentialの減少,活動電位の大きさの減少,50%再分極時間の短縮および最大立ち上り速度の減少が認められた.10-4Mではこれらの作用はさらに増強され,90%再分極時間も延長した.本測定装置は製作が容易で,活動電位を迅速かつ正確に計測することが可能であり,薬物の活動電位におよぼす作用の観察を容易にするものと考えられる.
  • 高浜 和夫, 宮田 健, 加瀬 佳年
    1977 年 73 巻 2 号 p. 151-176
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    N-methyl-9,10-ethanoanthracene-9(10H)-metkylaminehydrochloride(benzoctamine)の静穏作用を中心にした申枢作用をしらべ,その作用態度をchlorpromazine(CPZ),chlordiazePoxide(CDP)と比較した.1)マウスおよびラットの中毒症状は中枢抑制を主とし,特に筋弛緩が著明であった.毒性はマウス皮下でCDPの4.2倍,腹腔内で6.1倍,ラット腹腔内では3.8倍強い.CPZと比較するとそれぞれ1.9倍,同程度,および約1/2の強さであった.2)骨格筋弛緩作用強く,マウスの傾斜板法におけるED50で比較すると,CDPの5.6倍,CPZの約2/3に相当した.ネコの除脳強直を緩解する作用も強い(静注ED50 2.97mg/kg).3)電撃によるマウスの強直姓伸展(TE)を抑制するが,chemoshock抑制作用はみられなかった.4)ラットの識別および非識別条件回避反応をともに抑制した.5)マウスの闘争行動,嗅球除去および隔離飼育によるラットの情動過多を抑制した.これらの効果はCPZのそれの1/4~1/2に相当し,CDPと比較すると,闘争行動抑制は4~5倍強く,情動過多抑制作用は1/2~1であった.6)Amphctamincおよびmorphincで起こしたマウスの運動元進を抑制した.しかし,少量ではamphetamineによる充進を増強する傾向を示した.7)Reserpineによるマウスの体温下降および眼瞼下垂に対して拮抗しなかった.8)CPZと異なり,apomorphineによるイヌの嘔吐を全く抑制しなかった.9)少量では辺縁系の脳波に抑制パターンがあらわれ,この点CDPに類似していた.増量すると,皮質,中脳網様体にも抑制パターンがみられるようになり,CPZの作用に似ている.中脳網様体刺激による脳波覚醒反応に対して抑制的に働き,この点CPZと同一傾向を示した.以上の点からbenzoctamineは薬理学的に従来のmajorおよびminor tranquilizerのどちらの範疇にも属さない筋弛緩作用強力な新しいタイプのtranquilizerと考えられる.
  • 林 元英
    1977 年 73 巻 2 号 p. 177-191
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    紫根および当帰のエーテルならびに水エキスについて薬理作用を試験した.紫根工一テルエキスの腹腔内投与のみが比較的強い毒性を示し,軽度な下熱作用と協調運動の障害を示した.しかし経口投与およびその他のエキスはいずれの投与経路でも中枢神経系に対する影響はなかった.循環系に対する水エキスは紫根で心収縮力および拍動数の僅かな増大と末梢血管の収縮を示し,当帰は反対に心収縮力の減少と末梢血管の拡張を示して血圧を下降させた.腸管運動および血液凝固にはいずれのエキスも影響しなかった.炎症反応に対して当帰エキスは何ら影響しなかったが,紫根エキスは経口投与においてこれを抑制し,特にエーテルエキスは血管透過性充進および急性浮腫に対して抑制作用を示し,水エキスは肉芽増殖を抑制する傾向にあり,抗炎症作用を有することが認められた.なお紫根エーテルエキスは刺激性を有し便通をよくするかもしれない,以上の成績から紫根の薬効を検討してみるに,中葯志に述べられている「清熱涼血,消腫解毒,滑腸通便」は紫根エキスに認められた下熱作用,抗炎症作用および瀉下作用によるものと思われる.他方当帰については今回試験した範囲内では特に明らかな薬理作用は認められなかった.
  • 林 元英
    1977 年 73 巻 2 号 p. 193-203
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    紫根の色素成分であるshikoninおよびacetylsikoninにっいてその薬理作用を試験した,両色素の構造的相違はacctyl基の有無であり,構造の類以性と共に薬理作用も同様で効力に僅かの差が認められたのみであった.経口投与における主な作用は,血管透過性亢進および浮腫の急性炎症反応に対する抑制作用と軽度な下熱作用で,前報の紫根工一テルエキスの作用と同じであった.摘出臓器に対しては心房運動を促進し,血管を収縮させた.しかしこの作用はtolazolilleやpropranololの前処置によって影響されなかった.また高濃度では腸管を弛緩し,腸管収縮物質に拮抗した.これらの作用は自律神経系あるいはその受容体に働くものではなく,色素のもつ刺激作用による直接作用と思われた.色素は全身投与において血液凝固に影響しなかったが,heparinの凝固抑制作用を阻止した.この作用が血液凝固抑制因子に拮抗して,静脈瘤などの血栓形成を促進して痔疾の治療に有益に作用するかもしれない.他方色素を軟膏として局所に適当した場合は,血管透過性充進ならびに浮腫の急性炎症反応を顕著に抑制した.他方肉芽増殖に対しては増大作用を示し,創傷治癒を明らかに促進させた.この局所作用は製剤である紫雲膏の薬効を推定するものであるが,この点についてはさらに検討中である.
  • 林 元英
    1977 年 73 巻 2 号 p. 205-214
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    生薬紫根の薬理学的研究の一環として,その代表的製剤である紫雲膏の炎症反応に対する影響を,紫根ならびに当帰工一テルエキス軟膏の局所適用と比較検討した.紫根エキスはhistamine, bromelain, bradykininおよび抗ラット・ウサギ血清によって惹起した血管透過性充進を明らかに抑制した.抗ラット・ウサギ血清および熱刺激による浮腫に対しても有意な抑制作用を示し,紫外線照射ならびに熱刺激による局所皮膚温の上昇をも抑制した.創傷治癒に対しては創傷部の牽引法および面積法の両方法において明らかな治癒促進効果を示した.紫根エキスによるこれらの作用は0.2~0.1%濃度が最も強力で,それより上下の濃度になるにつれて効果は減弱した.当帰エキスは血管透過性充進を軽度抑制し,濃度の高い程作用も強く,急性浮腫に対しては0.04%濃度軟膏のみに抑制作用が認められた.しかし炎症性皮膚温の上昇や創傷治癒に対しては何ら影響しなかった.紫雲膏は紫根および当帰成分をそれぞれ0.2%,および0.04%含有し,両者が最も強力な効果を示す理想的な濃度を含有することが認められた.そして紫雲膏は紫根エキスと同様な作用を示し,当帰配合による有意差は認められなかったものの,紫根単独より多少強力な効果を呈した.それ故紫雲膏は炎症性の腫張ならびに発赤,発熱を抑制し,創傷治癒を促進すると共に紫根には抗菌作用があると言われるので外傷などの治療薬として好ましい製剤であることが認められた.
  • 佐藤 精一, 丸山 七朗, 陳 健男, 海老名 広一, 辻 浩洋
    1977 年 73 巻 2 号 p. 215-228
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    睾丸除去および睾丸・副腎両除去を行なったマウスにtestostcrone propionate(TP), 19-nortestosterone(NT)および4-androstene-3, 17-dione(AD)を投与し,顎下腺分泌細管の計量組織学的および組織化学的検討を行ない,また顎下腺重量の変化と他の男性ホルモン感受性臓器重量との関係を調べた.睾丸除去により,顎下腺重量は著しく減少し,これにTPまたはNTを投与すると著明な増加をきたしたが,ADでは弱かった.分泌細管のサイズ,分泌細管細胞内RNA,tryptophanおよびPAS陽性反応は睾丸除去により減少し,TPおよびNTの投与により著明に増加したが,AD投与では弱かった.睾丸・副腎両除去マウスにおける顎下腺重量,分泌細管サイズおよび細管細胞内RNAの変動は睾丸除去の場合とほぼ同様であった.睾丸・副腎両除去マウスにおける肛門挙筋重量の変動は顎下腺と類似していたが,前立腺重量ではTPのみが重量増加作用が強く,NTはAD同様有意の重量増加作用は認められなかった.以上の結果からマウス顎下腺はこれらステロイドによって,分泌細管細胞のRNAの合成を促してtryptophan含有のタンパク質を合成し,さらにPAS陽性のmucinを増加させて,顎下腺の肥大をきたすと考えられるが,これらのステロイドに対する感受性は前立腺とは相当異なることが示された.
  • 森田 誠治, 入江 康夫, 桜木 幸子, 郡 英明, 西野 広
    1977 年 73 巻 2 号 p. 229-235
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラット,ビーグル犬と家兎にcarteololを経口あるいは静脈内投与した時の吸収・分布・排泄速度について検討した.血漿中のcarteololの半減期は投与ルートにかかわらずラットで1.22~1.45時間,ビーグル犬で1.73~2.08時間,家兎で1.42~1.43時間であった.経口投与後log(C1C)—time plotより求めた吸収速度定数はラットで1.89hr-1,ピーグル犬で1.04hr-1,家兎で1.54hr-1であった.ヒトにcarteolol 30mg(素錠あるいはフィルムコーティング錠)を内服させた場合の薬動力学パラメーターは,半減期:4.50時間(素錠),4.30時間(フィルムコーティング錠),消失速度定数:0.154hr-1(素錠),0.161hr-1(フィルムコーティング錠)となり剤形間に差はなかった.さらに2,5あるいは10mgを内服させた場合carteololの尿中排泄をSigma-minus plotし求めた消失速度定数は投与量にかかわらず0.137~0.160hr-1であった.
  • 嶋 啓節, 姉崎 健, 桜田 忍, 木皿 憲佐, 中浜 博
    1977 年 73 巻 2 号 p. 237-242
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ネコを用いnuclcus dorsal raphe (NDR)の単一ニューロン活動に対するmorphine (1mg/kg i.v.)の作用を検討したところ次の結果が得られた.1)NDRより36個のニューロンを単離したが,そのうち13個はゆっくりした一定の間隔で発火するclock like(CL)ニューロンで残りの23個は比較的不規則な間隔で発火するnon-clocklike(NCL)ニューロンであった.2)CLニューロンは刺激に全く反応しなかったが,23個のNCLニューロン中13個は侵害刺激(皮膚のツメ付き鉗子によるpinch, bradykinin動脈内投与)および非侵害刺激(毛吹き,tapping)に反応し,4個は非侵害刺激のみに,さらに残りの6個はCLニューロンと同様刺激に反応しなかった.3)CLニューロン6個およびNCLニューロン12個についてmorphineの作用を検討したところ,すべてのCLニューロンおよび12個中7個のNCLニューロンの発火頻度はmorphine投与後変化しなかったが12個中5個のNCLニューロンの発火頻度は減少した.さらにmorphine投与後NCLニューロンの侵害刺激による反応は著明に抑制されたが,非侵害刺激による反応はほとんど変化しなかった.
  • 植木 昭和, 五味田 裕, 荒木 泰典, 山田 勝士, 吉村 裕之, 片岡 泰文
    1977 年 73 巻 2 号 p. 243-255
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    ラットおよびマウスを用いて,ID-690の行動薬理学的作用について検討し,主としてdiazepamの作用と比較した.1)Open-fieldにおけるラットの自発運動はID-6902~5mg/kgのp.o.投与によって増加した.これはdiazepamの作用とほとんど同様であった.2)長期隔離マウスの闘争行動に対するID-690の抑制作用はdiazepamより約5倍強力であった.3)中隔野破壊ラットの情動過多ならびに嗅球摘出ラットの情動過多およびmuricideに対するID-690の抑制作用はdiazepamとほとんど同程度の強さであった.4)マウスの最大電撃けいれんに対するID-690の抑制作用はdiazepamの約1/30,nitrazepamの約1/15,clonazepamの約1/3.5と,きわめて弱いものであったが,pentetrazolけいれん抑制作用は逆にdiazepamの約18倍,nitrazepamの約7・5倍,clonazepamとほぼ同程度の強力なものであった.5)マウスのrotarod法におけるID-690の協調運動抑制作用はdiazepamの約5倍強力であり,また傾斜板法における筋弛緩作用はdiazepamの約10倍強力であった.6)以上,ID-690は質的には他のbenzodiazepine誘導体と同様の中枢神経作用を有し,馴化作用はdiazepamとほぼ同程度の強さであるが,筋弛緩作用はその5~10倍強力であり,また最大電撃けいれん抑制作用はほとんどないのにpcntetrazolけいれん抑制作用が特異的に強力な点が特徴である.
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