日本薬理学雑誌
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新しい中枢性筋弛緩薬Chlorphenesin Carbamateの脳波学的研究
渡辺 繁紀荒木 博陽川崎 博巳植木 昭和
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1977 年 73 巻 4 号 p. 479-496

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抄録

慢性電極植込みウサギを用い,無麻酔の状態でchlorphcncsin carbamateの十二指腸内投与時の脳波作用をchlormezanone,mcthocarbamolと比較検討した.Chlorphenesin carbamateは自発脳波に対して,皮質および扁桃核では高電圧徐波,海馬ではθ波の脱同期化をおこし,脳波はいわゆる傾眠パターンとなる.Chlormezanoneも同様に自発脳波を傾眠パターン化するが,その作用はchlorphenesin carbamateよりもはるかに強力であった.Methocarbamolは自発脳波に対してほとんど変化を示さなかった.また,chlorphenesin carbamateでは動物は行動上,軽度の鎮静と著明な筋弛緩をおこすのに対して,chlormezanoneは,ごく軽度の筋弛緩をおこすだけであり,methocarbamolは全く筋弛緩を示さなかった.ChlorPhenesin carbamateは音刺激および中脳網様体,視床内側中心核,後部視床下部の電気刺激による脳波覚醒反応を軽度に抑制した.Chlormezanoncはこれらの反応を著明に抑制し,覚醒閾値の上昇をおこし,中脳網様体刺激による反応の抑制は軽度であった.Methocarbamolはいずれの覚醒反応に対してもほとんど作用を示さなかった.閃光刺激によって後頭葉皮質に誘発される電位(photic driving response)には,3薬物ともほとんど影響を示さなかった.視床内側中心核刺激による漸増反応はchlorphenesin carbamate,chlormezanoneによってごく軽度に抑制されたが,methocarbamolでは全く影響きれなかった.海馬の電気刺激による後発射はchlorphenesin carbamateおよびchlormezanoneによって著明に抑制されたが,扁桃核刺激による後発射の抑制は軽度であった.しかし,methocarbamolは,これらの後発射に対してほとんど作用を示さなかった.以上,ウサギの脳波に対する作用は3薬物中,chlormezanoneが最も強力で,ついでchlorphenesin carbamateであり,methocarbamolが最も弱かった.しかし行動上の作用は,chlorphenesin carbamateが最も強力であり,脳波作用よりも行動上の変化がより敏感に現われた.

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