日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
Hemoglobinおよびcytochrome cの薬物差スペクトルに関する研究(1)
小野 彪和田 文雄
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 74 巻 1 号 p. 77-89

詳細
抄録

Cytochrome P-450の基質差スペクトルに関する研究は数多いがその本質は未だ不明である.著者らはヘムたんぱく質としてhemoglobinおよびcytochrome cを用いて,cytochrome P-450の基質であるaniline(II型),aminopyrine(I型)およびcytochrome P-450の生理的基質とされているsteroid hormoneの添加による薬物差スペクトルの測定を行ない,cytochrome P-450の薬物差スペクトルと比較検討した.(1)anilineおよびaminopyrineによるmethemoglobinの薬物差スペクトルは403nmにtrough,420nmにpeakを示してII型に類似し,酸化型cytochrome cのaniline差スペクトルは417nmにtrough,404nmにpeakを示してI型に類似した.(2)Methelnoglobin,oxyhemoglobinおよびcarboxyhemoglbinのhydrocortisone差スペクトルおよびprednisolone差スペクトルは特徴的な形を示し,deoxyhemoglobinの4薬物による差スペクトルも特徴的な形(430nにtrough)を示した(3)その他の薬物差スペクトルは薬物とヘムたんぱく質の間の酸化還元反応によって誘導されるものと考えられる.(4)Anilineおよびaminopyrineに対する各種hemoglobinの親和性は還元型の方が酸化型よりも強く,oxyhemoglobinが最も強かった.(5)Hemoglobinおよびcytochrome cの各還元型はanilineよりもaminopyrineに対してより強い親和性を示した.以上aniline,aminopyrine,hydrocortisone,prednisoloneはhemoglobinおよびcytochrome cと酸化還元を含めた相互作用があり,疎水控のヘムたんぱく質であるcytochrome P-450のみならず,親水性のヘムたんぱく質であるhemoglobinおよびcytochrome cにおいても薬物差スペクトルが認められた.溶血液の各薬物差スペクトルは結晶hemoglobinより調製したoxyhemoglobinの場合と同様の傾向を示したが,prednisoloneを除く他の3薬物に対する親和性は溶血液の方が小さ,約1/100であった.

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top