日本薬理学雑誌
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咳漱反射の薬理学的研究―特に化学的刺激による咳様反射について―
柳浦 才三西村 友男細川 友和阿部 洋一岩瀬 博明
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1978 年 74 巻 3 号 p. 345-352

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抄録

1,1-dimethyl-4-phenylpiperazinium iodide(DMPP)適用によって誘発される咳様反射を応用して,咳漱反射の機序を検索する目的でイヌを用いて実験した.α-chloralose麻酔下において,DMPP2~10μg/kg i.v.,1~5μg/kg頸動脈内適用(i.a.)のほか,lobeline 100~400μg/kg i.v.,nicotine 5~20μg/kg i.v.の適用によっても咳様反射が誘発された.Histamine 10~20μg/kg i.v.適用では呼吸数の増加がみられたが,咳様反射は認められなかった.反復適用の場合,DMPPはtachphylaxisは認められないが,lobelineとnicotineには認められた.呼吸抵抗は,DMPP i.v.適用では変化しなかったが,DMPP i.a.,lobeline,nicotineおよびhistamine i.v.適用では増加した.DMPP i.v.適用による咳様反射は,morphine,codeine,oxymethebanol,picoperidamine,piclobetolにより抑制され,そのED50は気管粘膜の電気的刺激法により誘発された咳嗽に対するED50よりも,1.6~10倍高用量であった.また,DMPPによる咳様反射は,benzonatateにより軽度の抑制,hexamethoniumにより著明な抑制,両側迷走神経切断および,両側頸動脈洞神経切断により消失した.これに反し,isoproterenol,ephedrine,atropine,propranololは,DMPP適用による咳様反射に対して影響がみられなかった.以上,DMPP適用による咳様反射に対する薬物の影響から,この反射は気管粘膜の電気的刺激法による咳漱の誘発機序とはかなり異なり,頸動脈体の化学受容器を介する呼吸中枢性の作用であると考えられる.今後,両者の方法を用いて鎮咳薬の作用態度を追求することによって,中枢性か末梢性かを判別する一手段として応用できると考えられる.

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