日本薬理学雑誌
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降圧薬clonidineのマウスinsulin分泌におよぼす影響
小澤 光後藤 正義高橋 美智子植松 利男
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1978 年 74 巻 3 号 p. 383-388

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抄録

epinephrineとclonidineのinsulin分泌におよぼす影響をマウスin vivoの実験系で検討した.epinephrine 500μg/kgを皮下投与すると血糖値はほとんど変化せず,血漿insulin(IRI)は漸次増加する傾向を示した.glucose 1g/kgの静脈内投与はIRI,血糖値共に増加させた.epinephrineはglucose刺激によるIRIの増加を抑制し,この抑制効果は交感神経α遮断薬であるphentolamineで消失し,交感神経β遮断薬であるpropranololで増強された.phentolamine投与時にはepinephrine単独投与時よりもさらに大きなIRIの増加がみられた.これらの結果は,交感神経α受容体刺激効果はglucose刺激によるinsulin分泌を抑制し,交感神経β受容体刺激効果は促進することを示唆するものと思われる.絶食時におけるclonidine 30,100,300μg/kgの皮下投与はIRIをわずかに減少させ,血糖値を上昇させた.この血糖値の上昇はclonidineの投与量に依存して増大した.clonidine 100μg/kgの静脈内投与はglucose刺激によるinsulin分泌を抑制し,血糖値を著明に増大させた.このclonidineによるinsulin分泌の抑制は,phentolamineによって消失した.一方propranololはこの抑制効果を消失させなかった.これらの結果をcpinephrine投与群の結果と比較すると,clonidineは膵β細胞よりのinsulin分泌において交感神経α受容体刺激効果を示していると考えられる.

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