日本薬理学雑誌
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実験的肝障害に対するチオール化合物の影響(第3報)
Ethionine肝障害の薬物代謝活性に対するTiopronin (2-mercaptopropionylglycine)およびGlutathioneの作用
千葉 剛久堀内 正人明石 八重子
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1979 年 75 巻 6 号 p. 563-570

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抄録

ethionine肝障害に対し,tiopronin(2-mercaptopropionylglycine)およびglutathioneは障害を抑制することを前報で報告した.この抑制効果を調べるため薬物代謝活性を指標に検討を加えた.ラットにtioproninを6日間投与し,肝microsomeのaniline水酸化ならびにaminopyrine N-脱methyl化酵素活性およびcytochrome P-450量を測定したが,正常群との間に差は認められなかった.1g/kgのethionine投与24時間後のラット肝microsomeのaniline水酸化ならびにaminopyrine N-脱methyl化酵素活性は正常群に比し,それぞれ53.2%,61.7%と低下していた.ラットにtioproninまたはglutathioneを投与しても両酵素活性に影響はみられなかったが,ethionine投与ラットにこれらチオール化合物を投与するとethionine投与による両酵素活性の低下を阻止した.また,ethionine投与によりNADH-cytochrome c reductase(fp1)に影響はみられなかったが,NADPH-cytochrome creductase (fp2)は活性の増加,cytochrome P-450量は減少が認められた.fp1,fp2に対するこれらチオール化合物の影響はなかったが,ethionine投与により減少するcytochrome P-450量に対しチオール化合物は抑制する傾向がみられ,特にtioproninは有意に抑制していた.aminopyrine,hexobarbitalおよびpentobarbitalの血中からの消失はethionine投与によって著しく遅れ,tioproninまたはglutathioneを投与すると血中消失を速めた.hexobarbitalおよびpentobarbitalの睡眠時間についても同様の傾向がみられ,ethionine投与による睡眠時間の延長はtioproninまたはglutathione投与により短縮される傾向がみられた.以上の結果から,tioproninおよびglutathioneはethionine肝障害を抑制することを薬物代謝活性の検討により明らかにした.

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