日本薬理学雑誌
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肝の薬物代謝酵素ならびに微細構造におよぼすDiisopropyl 1,3-dithiol-2-ylidene malonate(NKK-105)の影響
中山 貞男
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1979 年 75 巻 6 号 p. 571-584

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抄録

NKK-105は一定量でCCl4,ethionine脂肪肝に対し,抗脂肪肝作用を有するが,大量では肝肥大を生じる.これらの作用機序について,肝薬物代謝酵素ならびに電子顕微鏡による肝微細構造変化を検索し,次の結果を得た.NKK-105は250,500,1000mg/kg,p.o.で肝重量の増加を示した.肝薬物代謝酵素に対しては,aminopyrine demethylase活性の上昇,microsomeのcyt.b5,cyt.P-450含量の軽度の上昇を示した.mitochondriaならびにmicrosomeの脂質過酸化物形成は,NKK-105投与によって著明に抑制された.肝脂質はNKK-105投与後12時間に,TLの減少を認めた.in vitroにおいて,NKK-105の1×10-3M適用は,microsomeのcyt.b5,cyt.P-450活性に変化を与えなかったが,mitochondriaならびにmicrosomeの脂質過酸化物形成を著明に抑制した.NKK-105投与による肝微細構造変化はrER配列の不規則化とsERの増生が主であった.1000mg/kg p.o.ではsERの増生,網状化が著明で,96時間後まで持続するのを認めた.NKK-105 250mg/kg,p.o.は,CCl4投与によるmicrosomeのcyt.b5,cyt.P-450含量の減少を軽度に抑制し,aminopyrine demethylase活性の低下,mitochondriaならびにmicrosomeの脂質過酸化物形成促進を明らかに抑制した.ethionine投与によるこれらの変化に対しても同様であったが,cyt.P-450含量の減少は抑制しなかった.in vitroにおいても類似の結果が得られた.これらの結果から,NKK-105の大量投与による肝肥大現象は,肝の代謝能亢進という機能的な反応と考えられる.CCl4ならびにethionine脂肪肝に対するNKK-105の抗脂肪肝作用機序には,mitochondria,microsomeにおける脂質過酸化物形成の抑制が,重要な意義を持つものと考えられる.

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