日本薬理学雑誌
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新しいベンゾジアゼピン系化合物,7-Chloro-1-cyclopropylmetyl-1,3-dihydro-5-(2-fluorophenyl)-2H-1,4-benzodiazepin-2-one(KB-509)の抗潰瘍作用
福田 俊一伊藤 敬三能勢 尚志
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1981 年 77 巻 3 号 p. 273-280

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抄録

7-chloro-1-cyclopropylmethyl-1,3-dihydro-5-(2-floropheny1)-2H-1,4-benzodiazepin-2-one(KB-509)は,抗不安薬として期待される新しい benzodiazepine 誘導体である.この薬物の抗不安作用を評価する一環として抗ストレス潰瘍作用および血清 11-hydroxycorticosterone(11-OHCS)値に対する作用をマウスを用いて検討した.KB-509 の抗ストレス潰瘍作用を検討するのに先立ち,ストレス負荷条件を種々検討し,diazepam が筋弛緩作用発現量以下で明らかな抗潰瘍作用を示す実験条件を検索した.その結果,26°C,5時間の拘束水浸漬のストレス条件下でdiazepam が強い抗潰瘍作用を示すことを見い出した.この緩和なストレス条件下でKB-509は強い抗潰瘍作用(ED50: 0.36mg/kg,p.o.)を示し,diazepam および atropine sulfate の約3倍および約9倍の効力を有した.しかし KB-509 は diazepam と同様,indomethacin 潰瘍や焼灼潰瘍に対して作用を示さなかった.ストレス負荷により上昇する血清 11-OHCS値に対して KB-509 および diazepam は抑制作用を示したが,抗ストレス潰瘍作用を示すような低用量では作用を示さなかった.以上の結果から,著者らの見い出したストレス負荷条件は抗不安薬の持つ種々の薬理作用のうち,抗不安作用を特異的に反映しうる条件であり,KB-509 は diazepam ならびに atropine より優れた抗ストレス潰瘍作用を示し,その作用は下垂体—副腎系よりもむしろ間脳—自律神経系を介して発現していると推察した.

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