日本薬理学雑誌
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疾患モデル“高脂血症ラット”における Steroid Hormones 動態
平井 正直増渕 美子熊井 俊夫植松 晃代小森山 憲次
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1981 年 77 巻 3 号 p. 261-272

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抄録

自然発症由来 Sprague Dawley ラットの選択的兄妹交配により新たに開発した疾患モデル「高脂血症ラット—HLR—」のF14(一部 FlO),13~14週令を用い steroid hormones 動態を調べた.血漿中 free,total cholesterol level は F14,F10 雌雄いずれも有意高値を示したが,血圧は高い群と正常値を示す群との存在を見出した.HLD 卵巣重量は有意高値を示し卵巣 progestin(progesterone,20α-OH-P)は対照の2~3倍以上の有意高値を,一方,卵巣 estradiol は 1/2~1/3 以下の有意低値をそれぞれ示した.子宮重量は有意低値を示した.HLR の性周期は不規則,殊に持続性 diestrus の発現頻度が有意に高い.睾丸重量は有意低値を,睾丸内 testosterone は低値を,また,睾丸内 estradiol は高値をそれぞれ示した.前立腺重量に有意変化はない.副腎重量は雌雄共に有意高値を示した.雌では副腎内 corticosterone,18-OH-DOC が共に有意増加を示し,一方,雄では副腎内 corticosterone の含有量のみに有意増加が認められた.近縁臓器として肝重量は雌雄共に有意高値を示し,周辺性脂肪沈着の組織像を示した.また,胸腺,腎の重量は雌雄共に有意低値を示した.以上の成績から HLR における卵巣機能異常,殊に,高 progestin と低 estrogen および性周期の不規則性が見出きれ,前回報告の繁殖成績(妊孕率,産仔数)有意低下とを併せ考え,高脂血症における性 steroidogenesis 低下に起因する生殖生理異常を提起した.睾丸内低 testosterone,高 estradiol 即ち,estrogen 優位に基づく睾機能低下が見出され卵巣と共に繁殖成績の有意低下の要因形成が推定された.雌副腎の corticoids 過剰産生による顕著な副腎皮質機能亢進は,性差に基づく脂質蛋白移送機構と 11β-hydroxylation および 18-hydroxylation のそれぞれの亢進が推定された.肝重量増加は過剰な血漿脂質蛋白の摂取とその移送機構の調節欠損について論じ,胸腺重量減少は steroids 増加と高脂血症由来の面から,また,腎重量減少は血漿浸透圧低下と糸球体における虚血性変化と血漿 cholesterol 異常増加との関係より言及した.

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