日本薬理学雑誌
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実験的腎炎ラットに関する薬理学的研究(第11報) 抗ラット GBM ウサギ血清による腎炎の病理組織と生化学的パラメーターの変動
鈴木 良雄永松 正鬼頭 利宏高村 俊史伊藤 幹雄
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1981 年 77 巻 4 号 p. 407-417

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抄録

ラット腎より糸球体基底膜(GBM)を分離し,その trypsin 消化物を抗原として抗ラット GBM ウサギ血清(抗血清)を作製した.抗血清 0.25ml 宛をラットの尾静脈に注射して腎炎を惹起し,病理組織および生化学的パラメーターを測定して,既報の馬杉腎炎および改良型馬杉腎炎の場合と比較した.光学顕微鏡的観察においてヒトの腎炎の組織像とよく類似した像が観察され,なかでも静注後30日目で最も顕著な富核,半月体形成,ゆ着,硝子化および間質への浸潤等が認められた.螢光抗体所見として静注後1日目からウサギ IgG の“GBM への線状の沈着”(linear pattern)が認められ,全経過を通して一定の強さであった.一方,ラット IgG は10日目から認められ同じく linear pattern を呈した。flbrinogen の沈着も10日目から認められたが,螢光は係蹄壁のほか Bowman's space においても認められた.蛋白尿は一日目から有意に増加し,10日目にピークに達し正常の12倍であった.その後次第に減少したが60日目においても認められた.alkaline phosphatase および N-acetyl-β-glucosaminidase 活性もほぼ蛋白尿と同じパターンを示し,ピーク時には正常の約10倍と約3倍であった.血漿尿素窒素は抗血清注射後5日目に一過性の著明な上昇を示し,30日目以後は正常値を示した.cholesterol は注射後5日目から20日目にかけて正常値の約150%という有意な増加が見られた.今回のデーターを馬杉腎炎や改良型馬杉腎炎の場合と比較すると糸球体病変の程度は激しく,いわゆる腎炎型であり,より長期間の持続性を示した.

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