1982 年 79 巻 1 号 p. 15-22
PGE1の誘導体である16,16-dimethyl-tráns-Δ2-PGE1 methyl ester (ONO-802)の妊娠維持,黄体機能および排卵に及ぼす影響を検討した.1)妊娠ラットにおいて,ONO-802は妊娠2日目の投与で妊卵着床を部分的に阻害したが,着床期以後の妊娠4~15日目投与では作用せず,17日目投与(2mg/kg ip.bid)で流産作用が発現し,21日目投与(10~100μg/kg ip,1時間間隔で最高5回)では強力な分娩誘発作用が認められた.PGE1はONO-802の作用と類似しており,一方PGF2αは妊卵着床後の流産作用と分娩誘発作用を,PGE2は妊卵着床前および着床後の流産作用と分娩誘発作用を示した.PGF2αおよびPGE2の流産作用は妊娠ステージの進行とともにその作用を増強した.妊娠ウサギにおいて,ONO-802は妊卵の着床阻害作用および着床後妊娠ステージの進行とともに増大する流産作用が認められた.末梢血中estradiol-17β値は増加傾向を示したが有意の変化ではなかった.progesterone値は高投与量(1mg/kg,ip,bid)で有意の減少を示したが,流産作用は必ずしも血中progesterone値の減少に依存しなかった.2)子宮摘出・偽妊娠ラットにおいて,PGF2。およびPGE2は黄体期間の短縮効果を示したが,ONO-802にはPGE1と同様そのような作用はなかった.HCG投与による偽妊娠ウサギにおいては,ONO-802は高投与量(250μg/kg,ip,tid)の5~10日間連日投与で黄体退行作用を示した.3)周期的排卵を示すラットにおいて,発情前期の14時30分および15時30分の2回ONO-802 1mg/kgを投与した時排卵阻害作用が認められた.しかし,indomethacinと異なりHCG誘発排卵を阻害しなかった.ONO-802によって阻害された排卵は,PGE2またはHCGによって回復した.