日本薬理学雑誌
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Acemetacin(K-708)の抗炎症作用
和田 靖史江藤 義則大平 明良塚本 政巳中村 政記
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1982 年 79 巻 1 号 p. 43-55

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抄録

acemetacin (ACM)はindomethacim(IND)のcarboxymethyl esterであり,生体内でINDに代謝されることが明らかにされている.今回,ACMの抗炎症作用をINDと比較するとともに,prodrugとしての可能性について検討した.急性炎症モデルである血管透過性亢進,carrageenin,kaolinおよびnystatin足浮腫および紫外線紅斑に対し,ACMは経口投与により用量依存性の強い抑制作用を示した.さらに,慢性炎症のモデルであるpaper disk法による肉芽増殖およびadjuvant関節炎に対しても,ACMは強い抗炎症作用を示した.これらの炎症反応に対するACMの経口投与による抗炎症作用は,モル用量で比較しINDとほぼ同等であった.また,ex vivoにおける血小板凝集反応に対して,ACMは経口投与でINDに匹敵する効果を示した.ACMのcarrageenin足浮腫抑制作用は副腎摘出および連続投与によりほとんど影響されなかった.一方,ACMを炎症部位に局所投与した場合,carrageeninおよびkaolin足浮腫に対する抑制作用はINDと比較し極めて弱かった.さらにin vitroの試験において,prostaglandin生合成抑制作用およびADPによる血小板凝集に対する抑制作用も,ACMはINDの1/30~1/100の効果しか示さなかった.従って,代謝されにくい局所投与やin vitroにおけるACMの効果はINDに比較し著しく弱いことから,未変化体ACMの抗炎症作用は極めて弱いものと思われた.エステラーゼ活性の低いモルモットを用いた紫外線紅斑に対するACMの抑制作用発現は,INDと比較し明らかに遅効性であった.以上の結果から,ACMは吸収された後,生体内で活性物質(IND)に代謝され抗炎症作用を示すと考えられ,いわゆるprodrugとしての性質を有する薬剤であることが示唆された.

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