日本薬理学雑誌
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ラット実験的腎障害の臨床生化学的研究 第1報 尿 Alkaline phosphatase の由来性について
古濱 和久高山 敏小野寺 威
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1982 年 79 巻 3 号 p. 113-121

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抄録

実験的に誘発した馬杉型糸球体腎炎またはcephaloridine尿細管障害ラット尿中に排泄されるalkaline phosphatase(AlP)につき,neuraminidase処理前後の電気泳動パターンおよびL-phenylalanineまたは尿素による活性阻害効果を調べるとともに腎AlPの組織化学的検索を行い,タイプの異なる腎障害を臨床生化学的に区別することを試みた.その結果,尿AlPは対照正常ラットに比較して糸球体腎炎ラットで13倍,尿細管障害ラットで同様に8倍の増加がみられた.また,尿AlPの臓器由来性には病態のちがいにより明らかな性質の差異が認められた.糸球体腎炎ラットの尿AlPはneuraminidase処理によって易動度が変化せず,L-phenylalanineおよび尿素の阻害態度とも小腸AlPの性質にほぼ一致した.従って,これらの尿AlPは循環血液を経由して糸球体毛細血管の透過性亢進により尿中に漏出したと考えられた.一方尿細管障害ラットの尿AlPはneuraminidase処理前後の電気泳動パターンおよびL-phenylalanineによる阻害態度が腎AlPに類似し,腎AlPの組織化学でも近位主部尿細管上皮刷子縁の活性低下がみられたことから,これらの尿AlPは主として腎AlPが尿細管上皮の逸脱により出現したと考えられた.以上のことから尿AlP活性の臨床生化学的解析から逆に障害部位を推定することも可能であると結論した.

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