日本薬理学雑誌
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α-(p-Thenoylphenyl)-propionic acid (TN-762)の亜急性慢性炎症反応に対する影響ならびに鎮痛解熱作用
藤村 一鶴見 介登長谷川 順一柳原 雅良平松 保造前川 啓子
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1982 年 79 巻 3 号 p. 123-136

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抄録

TN-762はPG合成阻害作用が強く,急性炎症反応を著明に抑制するので,亜急性慢性炎症に対する影響ならびに鎮痛解熱作用を,indomethacinの他構造類似のphenylpropionicacid誘導体であるketoprofenおよびibuprofenと比較検討した.TN-762はmustardによるラット足蹠浮腫を明らかに抑制したが,その抑制効力はindomethacinより弱く,作用の持続も短かかった.cotton pellet法および肉芽嚢法で肉芽増殖に対する影響を検したところ,TN-762は有意な抑制効果を示し,その効力はibuprofenの約2倍であったが,ketoprofenより僅かに弱く,indomethacinの1/10以下であった.またadjuvant関節炎に対してもTN-762は明らかな抑制効果を示したが,indomethacinよりは弱かった,従ってTN-762は亜急性慢性炎症に対して顕著な抑制効果を呈したけれども,その効力はindomethacinに比較して相当弱く,ketoprofenと共にphenylpropionic acid誘導体のNSAIDは,急性炎症よりも増殖性炎症をより強力に抑制するindomethacinとは作用態度が異なっているように思われた.ただindomethacinでは高用量の場合体重増加を抑制し,全身毒性の関与が考えられると共に,抗炎症作用々量と毒性量とが接近していたが,TN-762やketoprofenでは体重増加に全く影響せず,安全性の高い薬物と思われた.TN-762はnystatin浮腫に対してketoprofenやindomethacinとほぽ同等の抑制効果を示し,膜安定化作用のあることが認められ,それが抗炎症作用機序の一つとも考えられた.TN-762は酢酸writhing,Haffner変法およびRandall and Selitto法にてketoprofenやindomethacinと同等の比較的強い鎮痛作用を示した.TN-762は正常体温には全く影響しなかったが,イースト発熱ラットやLPS発熱ウサギに対して著明な解熱作用を示した.しかしその効力はindomethacinに比して弱く,作用の持続も短かかったので,薬物動態の面からの比較検討が必要と思われた.

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