日本薬理学雑誌
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中枢性鎮痛薬Buprenorphineと中枢神経作用薬との相互作用 ―鎮痛作用およびHalothane麻酔増強作用による検討―
保田 好信塩屋 良秀中井 哲新谷 成之桧山 隆司
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1982 年 79 巻 3 号 p. 163-172

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抄録

強力な中枢性鎮痛薬であるbuprenorphineと種々の中枢神経作用薬との相互作用をマウスにおけるhalothane麻酔増強作用およびD'Amour-Smith法による鎮痛作用を指標にして検討した.また,buprenorphineの脳内アミン代謝におよぼす影響をラットを用いて検討した.diazepamおよびchlorpromazineはいずれも2,4,8および16mg/kg,s.c.で用量依存的にhalothane麻酔時間を延長させた.buprenorphine 0.01,0.1および1mg/kg s.c.はdiazepamの麻酔増強作用を用量依存的に抑制したが,chlorpromazineの麻酔増強作用には影響をおよぼさなかった.このdiazepamの麻酔増強作用に対してpentazocineおよびnaloxoneも抑制作用を示したが,morphineは影響をおよぼさなかったことから,buprenorphineの抑制作用はその麻薬拮抗作用によるものと考えられる.またdiazepamの麻酔増強作用を麻薬拮抗剤が抑制することからこのdiazepamの作用には内在性オピエートの関与が示唆される.低強度刺激による試験ではdiazepamおよびdroperidolはbuprenorphineの鎮痛作用に影響しなかった.buprenorphineの鎮痛作用は,reserpineおよびp-chlorophenylalanineで抑制され,5-hydroxytryptophanで増強されたが,α-methyl-p-tyrosineおよび3,4-dihydroxy-phenylalanineでは影響されなかった.これらのことからbuprenorphineの鎮痛作用にserotoninが関与することが示唆される.imipramineおよびnialamideは低強度刺激による試験ではbuprenorphineの鎮痛作用を抑制したが,高強度刺激による試験では増強し,刺激強度の変化によって異った結果が得られた.buprenorphine 0.1,1および10mg/kg s.c.はラットの各脳内部位でdopamineの代謝物である3,4-dihydroxyphenylacetic acidおよびhomovanillic acidを増加させ,中脳においてはserotoninの代謝物である5-hydroxyindole-acetic acidを増加させた.

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