日本薬理学雑誌
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中枢性鎮痛薬Buprenorphineの一般薬理作用(第二報)
新谷 成之梅里 正七男鳥羽 義文山路 美明北浦 敬介谷 武司石山 広信菊地 哲朗森 豊樹中井 哲渡辺 耕三桧山 隆司
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1982 年 79 巻 3 号 p. 173-191

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抄録

buprenorphine(B)の一般薬理作用をmorphine(M)およびpentazocine(P)と比較検討した.Bはウサギの脳波および睡眠覚醒周期にはほとんど影響しなかったが,Mは海馬の低振幅徐波化および徐波睡眠期の増加作用を示した.漸増反応および誘発紡錘群発に対してBはMおよびPと同様に抑制傾向を示した.増強反応に対してはBは抑制傾向を示しただけであったが,MおよびPは抑制作用を示した.後部視床下部刺激による脳波覚醒反応に対してBはMおよびPと同様に抑制作用を示した.Bは高用量で少数例においてのみ催吐作用を示したが,Mは用量依存的な催吐作用を示した.apomorphineによる嘔吐に対してBはMと同様に抑制作用を示した.呼吸に対してBはほとんど影響しなかったが,MおよびPは抑制作用を示した.血圧,心拍数,動脈血流量および心電図に対してBはほとんど影響をおよぼさなかったが,MおよびPは血圧下降,動脈血流量の増加作用等の影響をおよぼした.心筋収縮力および冠血管血流量に対してBはほとんど影響しなかったが,MおよびPは収縮力増加および血流量の増加後減少作用を示した.脳脊髄圧に対してBはほとんど影響しなかったが,MおよびPは上昇作用を示した.BはMおよびPと同様,胆汁分泌に影響をおよぼさなかったが,Oddi筋の収縮作用を示した.Bは尿量,腎血漿流量,糸球体濾過量および尿中電解質排泄量にほとんど影響しなかったが,MおよびPは尿量の減少作用を示した.膀胱内圧に対してBはほとんど影響しなかったが,Pは上昇作用を示した.carrageenin浮腫に対してBはMと同様,抑制作用を示したが,Pのその作用は弱かった.血漿中histamine量に対してBは影響をおよぼさなかったが,Mは増加作用を示した.以上のことからBはMおよびPとは異なり,中枢神経系,呼吸循環器系,腎機能に対する影響は少ないと考えられる.

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