日本薬理学雑誌
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呼吸作用薬の咳嗽反射に及ぼす影響
柳浦 才三北川 晴美細川 友和三澤 美和
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1982 年 80 巻 1 号 p. 51-59

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抄録

呼吸中枢の活動性を変化させた場合の咳嗽反射への影響を検索する目的で,pentobarbital 20mg/kg i.v.軽麻酔下のイヌを用いてpentylenetetrazol,nikethamideおよびpentobarbitalをおのおの椎骨動脈内に適用した場合の,上喉頭神経切断中枢端の電気刺激により誘発される咳嗽反射への影響を検討した.呼吸作用はrespiratory rate(RR),amplitude(RA)およびvolume(RV)を,咳嗽反射はnumber of coughs(NC)およびamplitude of cough(AC)をおのおの指標とした.pentylenetetrazolにおいて呼吸に影響のみられなかった2.5mg,5mg適用でNCにおのおの約25%および50%の増加が認められ,10mg適用ではRAに適用直後に約20%の増強が認められ,NCに約80%の増加が認められた.各用量とも咳嗽反射の増強は適用5分後には回復を示した.nikethamideにおいて呼吸に対して影響の認められなかった5mg,10mg適用でNCにおのおの約30および65%の増加が認められた.この増加は適用5分後には回復した.20mg適用ではRRに直後から1分後にかけて約20%の増加がみられた.この増加は5分後には回復を示した.pentobarbitalの0.25mg,0.5mgおよび1.0mgの適用時には呼吸に対してはほとんど影響は認められなかったが,NCは適用直後に各用量において約30,55および90%の抑制が認められ,ACにおいても適用直後に各用量で約30,50および80%の抑制が認められた.これらの抑制は適用10分後には回復を示した.以上,呼吸興奮は一般に咳嗽反射の増強を,呼吸抑制は一般に咳嗽反射の減弱を起こすことが明らかになり,その場合咳嗽中枢と呼吸中枢の薬物感受性閾値は咳嗽中枢の方が低い事が示された.さらにnumberとamplitudeにおいて呼吸,咳嗽反射おのおのの作用態度の相違から,呼吸と咳嗽反射のamplitude control systemとnumber control systemはある程度独立していることが示唆された.

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