日本薬理学雑誌
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ラットの胃運動面から見たReserpine潰瘍
鹿児島 正豊勝呂 信雄
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1982 年 80 巻 3 号 p. 231-238

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抄録

reserpine潰瘍の成因について,ラット腺胃の大弯側胃底腺領域(A域),小弯側胃底腺幽門腺境界域(B域),幽門近接部(C域)の3ケ所に電極を装着し,筋電図学的にその要因の検討を行なった.無処置ラットにおいてはB域で高電位のspikeが多発し,胃運動が活発であることが推察され,次いでA域であり,そしてC域においては高電位のspikeはほとんど認められず,またその数も少なかった.次にreserpine投与群では,投与後約30分間はA,B,C全域でspikeの抑制が見られるが,その後B域を中心に興奮が見られ長時間持続した.そこでreserpineによる興奮波が安定して認められる投与1時間後に各種薬物の投与およびvagotomyを行ない,それらの影響を検討した結果,spikeを持続的に著明に抑制したものはatropineとvagotomyであり,比較的長時間spike抑制が見られたものは,hexamethoniumとdiphenhydramineであった.phenylephrine,isoproterenol,phentolamine,propranolol,metiamide,methysergideでは弱い抑制か,または一過性の抑制が認められた.reserpine潰瘍の病変は,投与初期のA域を中心として起こる胃粘膜層のischemiaと後期のB域に初発し,A域に拡大するerosionに大別されることは既に報告した1)が,ischemiaの発生は胃運動が亢進するのと同時期から認められることから,catecholamineや生体内の他のアミン類の関与と共に,運動亢進により血管運動のバランスがくずれ,比較的太い血管の走行が少ないA域に強く現われてくるものと考えられる.またerosionの発生においても,その初発部位が胃運動が最も強盛であるB域であるところから,内因性catecholamine枯渇後の副交感神経優位状態による運動の亢進が強く関与しているものと考えられる.したがってreserpine潰瘍の成因には,末梢血行障害により粘膜抵抗性の減弱した部位が胃液の侵襲を受け易くなるばかりではなく,持続的な胃運動亢進の関与するところが大きいものである.

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