日本薬理学雑誌
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Traxanox sodiumの一般薬理作用 I.中枢・体性・自律神経系,消化器系および泌尿・生殖器系に及ぼす影響
後藤 一洋大菅 邦男芳賀 慶一郎津曲 立身
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1983 年 81 巻 5 号 p. 343-363

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抄録
traxanoxは各種試験において300mg/kg,p.o.まで中枢・体性および自律神経系に対する作用を示さなかった.traxanoxはin vitroで10-6M以上からモルモット気管筋の静止筋緊張を低下させた.この作用はisoproterenolやpapaverineよりも弱いものであった。traxanoxはin vivoおよびin vitroでchemical mediatorsに対する競合的拮抗作用を示さなかった.幽門結紮ラットにおける胃液分泌および胃灌流ラットにおけるpolymyxinによる胃酸分泌に対し,traxanox(10mg/kg,s.c.または3mg/kg,i.v.)はdisodium cromoglycateと同様に抑制作用を示した.また,麻酔犬へのtraxanoxの静脈内投与により一過性の胃腸運動の低下と,小腸ではこれに続いて弱い運動充進が認められた.この運動充進はatropineの前処置で完全に抑制された.traxanox 10-4Mはモルモット回腸を直接収縮させ,この反応もatropineによって抑制された.しかし,traxanoxは経口投与でマウスの腸管輸送能,ラットの消化管粘膜,水浸拘束ラット胃潰瘍およびラットの胆汁分泌に対し,300mglkg,P・o・まで何ら作用を示さなかった.traxanoxはラットで利尿作用(30mg/kg,p.o.以上)を示し,この作用は副腎摘除で影響されず,indomethacinとの併用で消失した.traxanox 10mg/kg,i.v.はdisodium cromoglycateと同様に妊娠ラット子宮自動運動を抑制する例があった.traxanoxは300mg/kg,p.o.で血漿中corticosteroncを増加させたが,血糖および血清脂質は変化しなかった.以上の知見から,traxanoxは抗アレルギー作用を示す用量(1~5mg/kg,p.o.)で中枢・体性・自律神経系,消化器系および泌尿・生殖器系に対し,ほとんど作用を示さないものと推定される.
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