日本薬理学雑誌
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Mazindolの行動および代謝に対する薬理作用
永井 克也森 勉大倉 実辻本 久敏中川 八郎
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1984 年 83 巻 2 号 p. 133-145

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抄録

摂食抑制剤として開発されたmazindolの行動に対する薬理作用とその作用機序を調ぺるためmazindolを食餌添加,脳内連続注入および皮下注射の3つの方法で投与し,摂食および飲水行動並びに活動の変化を特にその概日リズムに注目して検討した.mazindolを食餌に添加するとその添加前に比べて摂食挿制以外に一時的な飲水抑制や,Animex活動量並びに輪廻し運動量の増加をもたらすことがわかった.この際これらの行動の概日リズムには大きな変化がなかったが,暗時(消燈時)の行動のたかまりが明時(点燈時)の初期にまで延長して認められる様になった.またmazindolの脳内投与は摂食を抑制するが,特に暗時の摂食を強く抑制して概日リズムを乱すことが判った.この作用は側脳室投与では認められず,視床下部視交叉上核の後方2mmの正中隆起付近に注入した時が最も強く,mazindolの摂食抑制の作用部位がこの付近に存在する可能性を示唆している.mazindolを食餌に添加すると食餌効率が低下することから,mazindolの体重減少効果は摂食抑制以外に代謝変動による可能性を考え,mazindol投与による代謝変動を調べた.その結果mazindolの投与により血中尿素量の増加,アミノ酸分解酵素である肝チロヂントランスアミナーゼ,糖新生系酵素である肝フォスフォエノールピルベートカルボキシキナーゼ,および肝フルクトース1,6-ジフォスファターゼ等の活性増加と解糖系酵素である肝フォスフォフルクトキナーゼ活性の減少が引き起こされることから,mazindolはラットで蛋白,アミノ酸の分解を促進し,分解されて生じたアミノ酸の炭素骨格からの肝でのグルコース形成を促進するという蛋白質の異化作用をもつことが明らかとなった.

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