日本薬理学雑誌
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4-(4'-Chlorobenzyloxy) benzyl nicotinate〔KCD-232〕の薬理学的研究 ラットおよびマウスの脂質代謝におよぼす影響
岡田 孝道望月 利郎篠原 芳典高橋 佐依子高木 皓一入倉 勉
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1984 年 83 巻 4 号 p. 331-343

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抄録

正常飼料食ラットおよび高コレステロール飼料食マウスの脂質代謝におよぼすKCD-232〔4-(4'-chloro-benzyloxy)benzyl nicotinate〕の影響を検討し,下記の結果を得た.対照薬としてclo飾rateおよびnicotinic acid(NA)を用いた.1)KCD-232をラットに10日間経口投与し,最終投与を16時間絶食後に行なうと血清コレステロール(CH),トリグリセライド(TG)および燐脂質は用量(20~160mg/kg/day)依存的に低下した.clofibrateは.TGを低下させなかった。2)KCD-232は低比重リボ蛋白と超低比重リボ蛋白中のCHの和〔(LDL+VLDL)-CH〕を有意に低下させた.その結果,動脈硬化指数(AI)は有意に低下した.clofibrateは高比重リボ蛋白CH(HDL-CH)を低下させ,逆にAIを上昇させた.3)KCD-232は肝重量を軽度増加させたがclofibrateと異なり用量依存性は認められなかった,4)KCD-232は高コレステロール飼料食マウスでの血清CHの上昇を用量依存的に抑制し,回帰直線から求めたID30は39.8mg/kg/dayであった.KCD-232の抑制作用はcl面brateおよびNAに比べ強かった.5)KCD-232(loomg/kg/day)は,1回(in vitro実験)又は10日間連続投与(in vivo実験)したラットの肝において+14C-酢酸からの14C-CHおよび14C-脂肪酸合成をそれぞれ抑制した.clofibrateはCH合成を抑制したが脂肪酸合成を増加させた,NAはCHおよび脂肪酸合成のいずれに対しても明らかな影響を与えなかった.6)胸管リンパ管瘻ラットに経口投与した14C-コレステロールの腸管からの吸収をKCD-232は抑制した.7)KCD-232はclofibrateとは異なり連続経口投与したラットの肝においてペルオキシゾームを増殖させなかった.以上の成績からKCD-232投与による血中CHの低下は,肝でのCH合成抑制と腸管からの吸収抑制の両作用に,又TGの低下は肝における脂肪酸合成抑制作用に一部は依存していることが示唆された.KCD-232は構造的にも作用的にもclofibrateと異なり,又NAと比べても血中CHの低下および上昇抑制作用は強く,その作用機作も異なると考えられた.

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