日本薬理学雑誌
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実験的脳虚血時にみられる神経症状,および局所脳血流量とエネルギー代謝変動に対するIdebenone(CV-2619)の影響
永岡 明伸寿野 正広柴生田 正樹垣花 満
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1984 年 84 巻 3 号 p. 303-309

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抄録

虚血脳組織において,エネルギー代謝を改善することは閉塞性脳血管障害の治療にきわめて重要なことである.今回,脳卒中易発症系高血圧自然発症ラヅト(SHRSP)を用いて,実験的脳虚血時の神経症状(脳虚血性痙攣発作),脳内乳酸およびATP含量と局所脳血流量に対する6-(10-hydroxydecyl)-2,3-dimethoxy-5-metkyl-1,4-benzoquinone(idebenone,CV-2619)の影響を調べた.実験的脳虚血は8~10週齢,雄性SHRSPの両側総頸動脈の結紮(BCAO)により発症させた.CV-2619は10~100mg/kgを3日間あるいは10日間前処置(経口投与)した時,ほぼ用量依存的に脳虚血性痙攣発作の発現時間と致死時間を延長した.BCAO30分後に100mg/kgを1回腹腔内投与した場合にもこの神経症状軽減作用は認められた.この作用機序を解明するために,CV-2619(100mg/kg)を3日間連続経口投与し,BCAO施行後,局所脳血流量を測定したが,本薬物は脳血流量の減少を抑制しなかった.しかし,脳虚血による乳酸増加,乳酸/ピルビン酸比上昇とATP減少に対しては著明な抑制作用を示した.また,CV-2619は正常ラットの局所脳血流量に対しても無影響であった.このような成績から,CV-2619は虚血脳組織のエネルギー代謝を改善し,神経症状を軽減する作用を有することが示唆された.

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