日本薬理学雑誌
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84 巻, 3 号
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  • 石井 正昭, 小森 貞嘉, 佐藤 廣康, 太田 哲郎, 元村 成, 橋本 敬太郎
    1984 年 84 巻 3 号 p. 259-266
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    N-696の抗不整脈作用をイヌのジギタリス不整脈,摘出イヌ心室筋標本およびイヌ血液灌流房室結節標本を用いて検討し,propranololと比較した.1)N-696は30mg/kg静注では,ジギタリス不整脈には無効であった.しかし,全心拍数,心房拍動数を投与直後より有意に減少させ,その作用は60分まで持続した.血圧も投与後4分まで有意に減少させた.propranolol 3mg/kg静注はジギタリス不整脈を短時間であるが抑制した.全心拍数,心房拍動数および血圧は,投与後有意に減少した.propranololの最小有効血中濃度は1.7±0.4μg/mlであった.2)N-696(10~100μg/ml)およびpropranolol(3~10μg/ml)は,イヌ心室筋の静止膜電位には変化を与えなかったが,N-696(100μg/ml)は活動電位の振幅を有意に変化させた.最大立ち上り速度は用量に依存して減少させた.最小有効薬物濃度はN-696で60μg/ml,propranololで6μg/mlであった.3)N-696(30μg~3mg)をイヌ房室結節標本の後中隔動脈(PSA)および前中隔動脈(ASA)に投与すると,房室伝導時間を用量に依存して延長させた.propranolol(10~600μg)も,同様に房室伝導時間を延長させたが,房室伝導時間を15%延長する用量で比較すると,約8~21倍propranololの方がN-696より強かった.
  • 渡辺 敏樹, 松橋 邦夫, 高山 敏
    1984 年 84 巻 3 号 p. 267-282
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    新生仔ラットの生後1,3,5,7および9日にpargyline,methamphetamine,reserpine,norepinephrine,epinephrine,propranolol,chlorpromazine,6-hydroxydopamine,haloperidol,pilocarpine,neostigmineおよびatropineなどの自律神経作用薬を皮下投与して,仔の中枢神経系の発達への影響を行動発達の面から捉え検討を加えた,reserpine,chlorpromazine,6-hydroxydopamineおよびpilocarpineを投与した仔に体重の増加抑制がみられ,reserpine投与群では仔の死亡が有意に増加した.正向反射,断崖回避および負の走地性から離乳前の行動・機能の発達をみたが,reserpine,propranolol,6-hydroxydopamineおよびhaloperidol投与群の発達が遅延した.Animexによる自発運動量の観察から,生後21日にはnorepinephrine,epinephrine,chlorpromazineおよびatropine投与群に,生後49日にはnorepinephrine,reserpineおよびpropranolol投与群に自発運動量の亢進が,また生後21日目のmethamphetamine負荷によってreserpine,propranolol,chlorpromazine,6-hydroxydopamineおよびatropine投与群に自発運動量の増強効果が認められ,これらの作用は中枢カテコールアミン機構,とくにノルアドレナリン神経系の発達障害によって惹起されることが示唆される.またmethamphetamineの負荷は遅発行動毒性の顕性化,早期発見を可能にした.open field試験により潜時の延長,rearingおよびprecningの減少がpropranolol投与群にみられ,仔の情動性への影響が疑われた.haloperidol,6-hydroxydopamineおよびpropranolol投与群にみられたshuttleboxによる条件回避反応における学習獲得の低下および逃避潜時の延長は,中枢カテコールアミン機構,とくにドーパミン神経系の機能発達の障害によるものと考えられる.
  • 桝田 緑, 堀坂 和敬, 小枝 武美
    1984 年 84 巻 3 号 p. 283-292
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ラット腹腔内より採取した好中球を用い,その貧食・殺菌能および穎粒内酵素lysosomal enzylme遊離に及ぼすtaurineの影響を検討した.taurineは飲料水中に0.3%の割合に溶解して摂取(460mg/kg/日)させた.ラット血清中のtaurine濃度はtaurine投与期間の延長に伴い上昇した.一方,好中球中のtaurine濃度は1および3日間投与では有意に上昇したが,7および10日間投与では対照群に比べ差が認められず,21日間投与では再び著しく上昇した.大腸菌に対する殺菌能は好中球中のtaurine濃度の上昇に伴い増強された.0.03~3.0% taurine溶液を21日間ラットに摂取させた場合に,0.03~0.3%では投与量が増加するにつれて殺菌能が増強する傾向が認められ,1.0%では0.3%と同程度であり,3.0%では著しく減弱し0.03%の作用以下であった.殺菌能を最も増強する条件(0.3% taurine溶液の21日間投与により23.8%増強する)において,イースト貧食能も33.4%増強された.このときミエロペルオキシダーゼの細胞外遊離は76.0%増加した.一方,サイトカラシンB処理およびN-formylmethionyl-leucyl-phenylalanine刺激による顆粒内酵素(β-グルクロニダーゼおよびリゾチーム)の遊離は,0.3% taurine溶液の21日間投与によって10~20%抑制され,同時に,細胞質酵素である乳酸脱水素酵素の細胞外流出も20%抑制された,また,低張液に対する赤血球膜の抵抗性はtaurine投与によつて明らかに増強(18.0%)された.さらに,好中球膜の流動性membrane fluidityを蛍光偏光解消法で測定したところ,taurine投与によって膜流動性の増大(10.4%)が認められた。以上の成績より,taurineが好中球の膜流動化および膜抵抗性の増強などを介して,その貧食・殺菌能を強化し,生体防御機構に係わる役割を果たしていることが示唆された.
  • 杉野 陽子, 鹿児島 正豊, 片桐 鎮夫
    1984 年 84 巻 3 号 p. 293-301
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    無処置ラットおよびoxonate前処置ラットの血漿尿酸値におよぼすcatecholamiaesの影響について検討した.ラットの血漿尿酸値とアラントイン値は,epincphrine,phenylephrineおよびisoproterenolの静脈内投与で上昇した.norepinephrine投与では極く弱い上昇が見られた.両値上昇作用の強さはepinephrine>isoproterenol>phenylephrine>norepinephrineであった.また,各種β作用薬の尿酸値上昇作用の強さはisoproterenol≈salbutamol≈trimetoquinol>terbutalineであり,アラントイン値上昇作用の強さはisoprotcrenol≈salbutamol ?? trimetoquinol>terbutalineであった.oxonate前処置ラットにおいても,これらのβ作用薬50μg/kg静脈内投与による血漿尿酸値上昇作用の強さはisoproterenol≈salbutamol≈trimetoquinol>terbutalineであることが認められ,その作用はpropranolol 2.0mg/kg静脈内投与で完全に遮断された.さらに,oxonate前処置ラットにおいてisoproterenol 50μg/kg静脈内投与で見られた血漿尿酸値上昇作用はatenolol 1.0mg/kg併用では全く遮断されず,butoxamine 1.0mg/kg併用で有意に遮断された.以上の成績から,catecholaminesの血漿尿酸値上昇作用は,主としてβ2受容体を介するものであることが示唆された.
  • 永岡 明伸, 寿野 正広, 柴生田 正樹, 垣花 満
    1984 年 84 巻 3 号 p. 303-309
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    虚血脳組織において,エネルギー代謝を改善することは閉塞性脳血管障害の治療にきわめて重要なことである.今回,脳卒中易発症系高血圧自然発症ラヅト(SHRSP)を用いて,実験的脳虚血時の神経症状(脳虚血性痙攣発作),脳内乳酸およびATP含量と局所脳血流量に対する6-(10-hydroxydecyl)-2,3-dimethoxy-5-metkyl-1,4-benzoquinone(idebenone,CV-2619)の影響を調べた.実験的脳虚血は8~10週齢,雄性SHRSPの両側総頸動脈の結紮(BCAO)により発症させた.CV-2619は10~100mg/kgを3日間あるいは10日間前処置(経口投与)した時,ほぼ用量依存的に脳虚血性痙攣発作の発現時間と致死時間を延長した.BCAO30分後に100mg/kgを1回腹腔内投与した場合にもこの神経症状軽減作用は認められた.この作用機序を解明するために,CV-2619(100mg/kg)を3日間連続経口投与し,BCAO施行後,局所脳血流量を測定したが,本薬物は脳血流量の減少を抑制しなかった.しかし,脳虚血による乳酸増加,乳酸/ピルビン酸比上昇とATP減少に対しては著明な抑制作用を示した.また,CV-2619は正常ラットの局所脳血流量に対しても無影響であった.このような成績から,CV-2619は虚血脳組織のエネルギー代謝を改善し,神経症状を軽減する作用を有することが示唆された.
  • 池田 滋, 塚本 努
    1984 年 84 巻 3 号 p. 311-326
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ritodrine hydrochloride(ritodrine)は産科領域における早産期の防止を目的に開発されたadrenergic β-stimulantである.今回,ritodrineの骨格筋運動系ならびに中枢神経系に及ぼす作用をisoxsuprine hydrochloride(isoxsuprine)と比較検討し以下の結果を得た.マウス,ラットあるいはイヌの一般行動に対してritodrineは軽度の鎮静と自発運動の抑制を示した.また,イヌにおいては摂水行動の増大と嘔吐が認められたが,3~5時間で回復した.isoxsuprineもほぼ同様の作用を示したが,ritodrineよりもその作用は強力であった.ritodrineは高用量で探索行動を軽度抑制したが情動行動には影響は認められなかった.条件回避反応,振せん,協調運動,チオペンタール誘発睡眠に対しても作用は認められず抗痙攣作用も認められなかった.isoxsuprineの高用量では骨格筋運動系に対する抑制効果が明らかに認められた.ritodrineは単独作用として体温の上昇とreserpine拮抗作用が認められた.また脳波に対しては,自発脳波を軽度徐波化する傾向を示したが,各種の覚醒反応に対しては単回ならびに連続投与ともに何ら作用を示さなかった.以上の結果より,ritodr三neは骨格筋運動系ならびに中枢神経系には著明な作用を及ぼさないものと考察した.
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