日本薬理学雑誌
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抗炎症剤の薬効検定法としてのカラゲニン膿瘍モデルの再評価
田村 滋夫葛声 成二
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1984 年 84 巻 4 号 p. 337-344

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抄録

抗炎症剤の薬効が容易に判定でき,同時に薬効メカニズムを生化学的に分析できる炎症モデルとして,ラヅトにおけるカラゲニソ膿瘍をとりあげ再評価を加えた.2%カラゲニン0.5mlをラットの背部皮下に注射することによって生じる浮腫は炎症部位の血管透過性亢進を反映して,惹起後15時間のピーク時までは二相性変化を示した.初期の血管透過性充進は滲出液中のprostaglandin(PG)E含量と良く相関したが,PGEは15時間以後浮腫が消退する過程でピークに達し,15~24時間はこれらのパラメーターの間には良好な相関々係は認められなかった.炎症部位への細胞浸潤の指標とした滲出液中DNA含量は数時間の潜伏期の後,二相目の浮腫反応と対応して急激に増加した.この炎症反応はindomethacin(2mg/kg)又はdexamethasone(0.1mg/kg)を起炎処置と同時に1回経口投与することにより修飾を受け,前者は投与15時間後,後者は9時間後にそれぞれ最大の抑制効果を示した.indomethacinはカラゲニン注射と同時に投与した時には滲出液重量ならびにPGE濃度を有意に抑制したが,炎症発症後に投与した場合にはPGE濃度を有意に抑制したにも拘らず,重量に対しては無効であった.dexamethasoneは同様な投与方法のいずれによっても著明な抗炎症効果を示したが,PGE濃度には有意な影響を及ぼさなかった.本法は起炎処置後の早期より貯留する滲出液,後期に形成する膿瘍,更には肉芽を容易に単離でき,これらに対する抗炎症剤の感受性もよい.同時に多種の炎症パラメーターを生化学的に追求することができるので,簡便な抗炎症剤スクリーニングのモデルとして有用であると思われた.

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