日本薬理学雑誌
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TRH類縁体(DN-1417):Reserpineに対する脳内グルコース利用率および脳内モノアミンにおける拮抗作用
永井 康雄成実 重彦佐治 美昭名川 雄児
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1985 年 85 巻 5 号 p. 315-326

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抄録

thyrotropin-releasing hormone(TRH)およびその類縁体のDN-1417(γ-butyrolactone-γ-carbonyl-L-histidyl-L-Prolinamide citrate)のreserpineによる自発運動抑制作用および電撃痙攣閾値低下に対する拮抗作用について,その脳内作用機序を明らかにするため,DN-1417を用いラット脳内グルコース利用率(LCGU)および脳内諸部位のモノアミン含量における抗reserpine作用を検討した.reserpine 2 mg/kg,24時間前腹腔内投与(i.p.)によりLCGUは全脳で対照の57.2%まで著明に低下した.一方DN-1417(5 mg/kg, i.v.)は全脳でLCGUを68.5%まで回復させた.特に有意な回復が認められた部位は,視床背内側核,乳頭体,中隔核,線条体および側坐核であった.以上のDN-1417によるLCGUの回復作用は,dopamine(DA)受容体遮断剤のpimozide(1 mg/kg, i.p.)およびserotonin(5-HT)受容体遮断剤のmethysergide(5 mg/kg, i.p.)の前処置により完全に抑制された.rescrpineによる脳内諸部位のモノアミンの著明な減少に対して,DN-1417はDAを側坐核で回復させる傾向を示し,5-HTを視床下部で有意に回復させた,以上の結果より,DN-1417はモノアミン系を介してreserpineによる自発運動抑制作用および電撃痙攣閾値低下に拮抗すると考えられるが,特に前者は,側坐核を中心としたDA系を介して,また後者は,視床下部の5-HTを介した作用ではないかと考えられる.

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