日本薬理学雑誌
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ラット酢酸潰瘍の治癒過程における胃糖タンパク質生合成活性の変動
石倉 美治村上 茂森 陽
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1985 年 85 巻 5 号 p. 327-333

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抄録

ラット胃に酢酸潰瘍を作製し,2,10,40,80,365日目の時点で,その治癒過程における高分子糖タンパク質生合成の変動を3H-glucosamineの取り込みを指標として観察した.また,潰瘍作製ラットの非潰瘍部位についても同様に比較検討し,以下のことが明らかとなった.1) 酢酸潰瘍作製動物の潰瘍部位における全取り込み活性(組織およびメディウムの総和)とインキュベーション後に組織中に残存した全活性は,2日目で対照群の2.75,1.75倍と有意に上昇し,その後,全取り込み活性は,対照群と同じレベルに戻った.組織中の全活性は,徐々に減少して,365日で対照群の約50%となった.それに比較して,高分子糖タンパク質(peak I 画分)の生合成活性は,2日目で対照群の約50%まで有意に減少し,10日目で一度,対照群のレベルとなるが,40日以後,再び対照群の約50%に減少し,365日目では約30%となった.2) 潰瘍作製ラヅトの非潰瘍部位の組織高分子糖タンパク質の生合成活性は,潰瘍部位のそれとほぼ同様のパターンを示し,10日目で一度,対照群のレベルに回復した以外は,対照群の約50%と有意に減少していた.3) 継続的な内視鏡観察により再燃,再発を確認したラットの潰瘍部位と治癒したラット胃組織の作製365日目におけるそれぞれの3H-glucosamineラベル糖タンパク質のゲル濾過の溶出パターンは類似しており,高分子糖タンパク質は対照群の約50%と有意に減少していた.以上の結果は,慢性潰瘍において,何らかの刺激があれぽ,再燃,再発が起こり易い状態にあることを強く示唆するものである.

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