日本薬理学雑誌
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コレステロール負荷SHRに及ぼすNicardipineの影響
大庭 忠弘殿岡 まゆみ川島 育夫中山 貞男安原 一坂本 浩二
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1985 年 86 巻 2 号 p. 93-103

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抄録

自然発症高血圧ラット(SHR)を用いて高血圧症ならびにコレステロール飼料飼育による実験的高脂血症に対するnicardipineの作用を検討した.動物は12週齢SHRを用い,1) 普通食群,2) 普通食+nicardipine投与群,3) コレステロール投与群,4) コレステロール食+nicardipine投与群に分け8週間飼育した.nicardipineは0.5%methylcellulose懸濁液として30 mg/kgを毎日1回経口投与した.飼育開始後1,3,5,7,8週目に血圧,心拍数を測定し,2,4,6,8週目に後大静脈より採血,胸部大動脈・心・肝を摘出し血清,臓器脂質を測定し,形態変化を光学顕微鏡により観察した.nicardipineの投与により肝重量,肝体重比は有意に増加し,心・腎重量は有意に減少した.週齢による血圧の上昇はnicardipineの投与により有意に下降し,心拍数は普通食群では減少,コレステロール食群では増加抑制を示した.血清脂質はコレステロール食飼育により著明な上昇を認めた.nicardipineの投与によりHDL-C,HDL-PLの増加,普通食群でのTGの減少を認めた.atherogenic indexは普通食群ではHDL-Cの増加により減少傾向を示した.GOT,GPTはコレステロール食飼育で有意に増加し,コレステロール食+nicardipine投与群ではコレステロール食群に比べ有意に増加した.nicardipineの投与により肝脂質ではPLの有意な増加,心脂質ではTGの有意な増加,大動脈脂質ではTCの減少傾向を認めた.肝の組織像ではコレステロール食飼育により脂肪肝の発生を認めたが,普通食・コレステロール食群共nicardipineの影響は認められなかった.心・腎の組織像ではnicardipineの影響は認められなかった.以上nicardipineは動脈硬化の危険因子である高血圧症に対して血圧低下作用を有し,HDLの増加・大動脈TGの減少から動脈硬化に対して抑制的に作用することが示唆された.

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