日本薬理学雑誌
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β-Endorphin含量に及ぼす通電針刺激の影響
井口 賀之徳田 寛田村 定子岸岡 史郎尾崎 昌宣山本 博之
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1985 年 86 巻 2 号 p. 105-114

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抄録

針鎮痛の発現における下垂体β-endorphin(β-End)の関与について検討する目的で,ラットβ-Endの特異的定量法(HPLCとRIAの併用)を用い,通電針刺激(EA)の痛覚閾値および血漿,下垂体(Pit),視床下部(Hyp)ならびに脳脊髄液(CSF)のβ-End含量に及ぼす影響を,無処置,dexamethasone(Dex)処置ならびに副腎摘出(Adrex)処置SD系雄性ラットを用いて比較検討した.無処置群において,EAは痛覚閾値と血漿β-Endを有意に上昇させたが,Pit,HypおよびCSFのβ-Endには有意な影響を及ぼさなかった.Dexによって,コントロール痛覚閾値は影響されなかったが,針鎮痛は減弱する傾向にあり,EAによる血漿β-Endの上昇も抑制される傾向にあった.Pit,HypおよびCSFのβ-Endは,DexおよびDex後のEAによって影響されなかった.Adrexによって,静止時の血漿β-Endは有意に上昇したが,コントロール痛覚閾値は上昇しなかった.Adrexによって針鎮痛は減弱傾向にあったが,EA付加によって血漿β-Endはさらに上昇する傾向にあった.AdrexによってPitのβ-Endは上昇したが,EA付加によるそれ以上の上昇は認められず,HypおよびCSFのβ-EndはAdrexおよびAdrex後のEAによって影響されなかった.無処置,DexおよびAdrex群のいずれにおいても,血漿β-End値は血漿ACTH値と正の相関を示した.無処置,DexおよびAdrex群の個々例において,針鎮痛強度と血漿β-End値は相関しなかった.後肢加圧法による痛覚閾値の測定操作のみによっても,血漿β-EndはEA時と同程度に上昇し,この時には痛覚閾値の上昇は認められなかった.無処置群EA,Dex群EA,Adrex群およびAdrex群EAにおいて血漿β-Endは上昇したが,HypおよびCSFのβ-Endに有意な変化は認められず,下垂体β-Endおよび下垂体由来の血漿β-Endが中枢神経に移行した可能性は少ないと考えられた.これらの結果から,針鎮痛の発現に下垂体β-Endが直接的には関与しないことが示唆された.

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