日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
86 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • ―顆粒膜Cyclic AMP依存性タンパクリン酸化反応―
    黒沢 元博
    1985 年 86 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    ラット肥満細胞を細胞破さい装置により破さいした後Percoll比重法により顆粒を分離した.膜を欠き膨満した形態を示すいわゆる破損顆粒を,Mg2+の存在下に外因性protein kinaseおよびタンパク基質を加えることなく[γ32P]ATPと反応させ,SDS/PAG電気泳動を行うと,分子量44,000のポリペプチドがリン酸化した.この反応はATP,Mg2+に依存し,1 mM Mg2+で最大の反応がみられた.反応は急速で,至適反応温度は30°C であった.0.05~0.5 μM cyclic AMPは本タンパクリン酸化反応を刺激し,0.45mM CaCl2は抑制的に作用した.phosphatidylserineおよびphorbol ester TPAは影響しなかった.分子量44,000のポリペプチドはアイソエレクトリックポイント6.6~7.6で数個の成分より構成されていた.以上より,肥満細胞顆粒にはいわゆる内因性cyclic AMP依存性タンパクリン酸化能が存在することが明らかになった.
  • 大庭 忠弘, 殿岡 まゆみ, 川島 育夫, 中山 貞男, 安原 一, 坂本 浩二
    1985 年 86 巻 2 号 p. 93-103
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    自然発症高血圧ラット(SHR)を用いて高血圧症ならびにコレステロール飼料飼育による実験的高脂血症に対するnicardipineの作用を検討した.動物は12週齢SHRを用い,1) 普通食群,2) 普通食+nicardipine投与群,3) コレステロール投与群,4) コレステロール食+nicardipine投与群に分け8週間飼育した.nicardipineは0.5%methylcellulose懸濁液として30 mg/kgを毎日1回経口投与した.飼育開始後1,3,5,7,8週目に血圧,心拍数を測定し,2,4,6,8週目に後大静脈より採血,胸部大動脈・心・肝を摘出し血清,臓器脂質を測定し,形態変化を光学顕微鏡により観察した.nicardipineの投与により肝重量,肝体重比は有意に増加し,心・腎重量は有意に減少した.週齢による血圧の上昇はnicardipineの投与により有意に下降し,心拍数は普通食群では減少,コレステロール食群では増加抑制を示した.血清脂質はコレステロール食飼育により著明な上昇を認めた.nicardipineの投与によりHDL-C,HDL-PLの増加,普通食群でのTGの減少を認めた.atherogenic indexは普通食群ではHDL-Cの増加により減少傾向を示した.GOT,GPTはコレステロール食飼育で有意に増加し,コレステロール食+nicardipine投与群ではコレステロール食群に比べ有意に増加した.nicardipineの投与により肝脂質ではPLの有意な増加,心脂質ではTGの有意な増加,大動脈脂質ではTCの減少傾向を認めた.肝の組織像ではコレステロール食飼育により脂肪肝の発生を認めたが,普通食・コレステロール食群共nicardipineの影響は認められなかった.心・腎の組織像ではnicardipineの影響は認められなかった.以上nicardipineは動脈硬化の危険因子である高血圧症に対して血圧低下作用を有し,HDLの増加・大動脈TGの減少から動脈硬化に対して抑制的に作用することが示唆された.
  • 井口 賀之, 徳田 寛, 田村 定子, 岸岡 史郎, 尾崎 昌宣, 山本 博之
    1985 年 86 巻 2 号 p. 105-114
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    針鎮痛の発現における下垂体β-endorphin(β-End)の関与について検討する目的で,ラットβ-Endの特異的定量法(HPLCとRIAの併用)を用い,通電針刺激(EA)の痛覚閾値および血漿,下垂体(Pit),視床下部(Hyp)ならびに脳脊髄液(CSF)のβ-End含量に及ぼす影響を,無処置,dexamethasone(Dex)処置ならびに副腎摘出(Adrex)処置SD系雄性ラットを用いて比較検討した.無処置群において,EAは痛覚閾値と血漿β-Endを有意に上昇させたが,Pit,HypおよびCSFのβ-Endには有意な影響を及ぼさなかった.Dexによって,コントロール痛覚閾値は影響されなかったが,針鎮痛は減弱する傾向にあり,EAによる血漿β-Endの上昇も抑制される傾向にあった.Pit,HypおよびCSFのβ-Endは,DexおよびDex後のEAによって影響されなかった.Adrexによって,静止時の血漿β-Endは有意に上昇したが,コントロール痛覚閾値は上昇しなかった.Adrexによって針鎮痛は減弱傾向にあったが,EA付加によって血漿β-Endはさらに上昇する傾向にあった.AdrexによってPitのβ-Endは上昇したが,EA付加によるそれ以上の上昇は認められず,HypおよびCSFのβ-EndはAdrexおよびAdrex後のEAによって影響されなかった.無処置,DexおよびAdrex群のいずれにおいても,血漿β-End値は血漿ACTH値と正の相関を示した.無処置,DexおよびAdrex群の個々例において,針鎮痛強度と血漿β-End値は相関しなかった.後肢加圧法による痛覚閾値の測定操作のみによっても,血漿β-EndはEA時と同程度に上昇し,この時には痛覚閾値の上昇は認められなかった.無処置群EA,Dex群EA,Adrex群およびAdrex群EAにおいて血漿β-Endは上昇したが,HypおよびCSFのβ-Endに有意な変化は認められず,下垂体β-Endおよび下垂体由来の血漿β-Endが中枢神経に移行した可能性は少ないと考えられた.これらの結果から,針鎮痛の発現に下垂体β-Endが直接的には関与しないことが示唆された.
  • 松原 尚志, 戸内 明, 山田 のりこ, 西山 進也
    1985 年 86 巻 2 号 p. 115-127
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    新しい睡眠導入剤450191-Sのラット肝薬物代謝酵素系への影響を検討し,nitrazepamやphenobarbitalとの作用の比較を行った.ラットに450191-Sを50~200 mg/kg/dayの割合で1~14日間連続して経口投与した後に,肝薬物代謝酵素の機能を7-alkoxycoumarin O-dealkylase活性を指標として調ぺた.450191-sを150~200 mg/kgの投与量で3~5日間以上投与した動物で,cytochromeP-450依存性のO-dealkylase活性の増加が認められ酵素誘導現象が観察されたが,肝肥大はみられなかった.大量の450191-Sを1週間投与して酵素誘導をひきおこした後に休薬すると,増大した酵素活性は3~5日間の休薬でほゞ正常レベルにまで回復した.450191-S投与による肝薬物代謝活性の増大は,投与量を200,400,600 mg/kg/dayと増量することにより顕著に認められるようになった.nitrazepam投与によってもラット肝薬物代謝活性の増大が認められた.450191-Sやnitrazepamの大量投与時には,cytochrome P-450含量やUDPGA-glucuronyltransferase活性の増大も認められ,同一量の薬物投与時の活性増大の程度は両薬物でほゞ同じであった.典型的な酵素誘導剤であるphenobarbitalを腹腔内に10~40 mg/kg/dayの量で3日間投与した際にみられる肝薬物代謝活性の増大は,450191-Sやnitrazepamを200~600 mg/kg/dayで3日間経口投与したときの活性増大とほゴ同程度であった.これらの結果から,450191-Sの酵素誘導作用の強さはnitrazepamとほゞ同一であるが,phenobarbitalよりははるかに弱いと結論できた.450191-S,phenobarbitalおよびβ-naphthoflavone投与ラットでpentobarbital誘導の睡眠時間を比較すると,450191-Sやphenobarbitalによる酵素誘導発現時には睡眠時間が短縮したが,β-naphthonavoneによる酵素誘導時には睡眠時間が延長した.これらの実験成績から,450191-Sは主としてphenobarbital型の酵素誘導をひきおこしていると結論できた.
  • 田中 日出男, 乗鞍 良, 吉森 丈夫, 菅野 浩一
    1985 年 86 巻 2 号 p. 129-143
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    既存のベンゾジアゼピン系薬物に比べて,骨格筋弛緩作用が弱いという特徴を有する新しい睡眠導入剤1H-1,2,4-triazolyl benzophenone誘導体,450191-S,およびその活性代謝物について脳移行性をbrain uptake index (BUI)法を用いて検討し,さらにマウスおよびラットを用いたin vivoの系においても脳移行性を検討した.BUI法において450191-Sは血液―脳関門(BBB)をほとんど通過しなかったが,ベンゾジアゼピン環に閉環した代謝物は脳移行性を示した.butano1の脳移行率を100%とした場合,主要代謝物中M-1(83~93%),M-2(73~89%)はdiazepam(83~96%)に匹敵する良好な脳移行性を示し,次いでM-3(55~67%)となり,M-A(10~11%)のそれは低かった.flunitrazepam(104~108%)とRo5-4864(115~122%)は非常に良好な脳移行性を示し,methylclonazepam(74~79%)もかなり高い脳移行性を示した.以上のベンゾジアゼピンの脳移行性は,Rm値で示される脂溶性とよい相関があった.次に450191-Sまたは,その一次閉環代謝物のM-1をマウスに経口投与した後の主要代謝物の血漿中および脳内濃度を比較した,450191-S未変化体は血漿,脳のいずれにおいても検出されず,吸収時に腸管または肝臓において速やかに閉環体に代謝されると思われる.M-1,M-2およびM-3は脳―血漿濃度比が1以上を示したが,M-Aは0.3程度となりBUI法の結果とよく一致した.M-4は血漿中には相当量存在するにもかかわらず,脳内にはほとんど検出されなかった.450191-S経口投与後の主要代謝物の,ラット脳内への移行もBUI法の結果とよく一致した.450191-SまたはM-1投与後の主要活性代謝物の血漿中濃度を比較すると,投与直後の血漿中濃度の上昇速度は450191-S投与群がM-1投与群より緩徐であり,このことがマウスの薬理作用,特に筋弛緩作用において450191-S投与群がM-1投与群より弱いという特徴を示すことに関与している可能性が推察された.
  • 植木 昭和, 渡辺 繁紀, 藤原 道弘, 山本 経之, 柴田 重信, 柴田 和彦, 太田 尚, 桜井 康子, 岩崎 克典, 劉 世玉, 山下 ...
    1985 年 86 巻 2 号 p. 145-163
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    マウス,ラット,ウサギを用いてlormetazepamの行動薬理ならびに脳波作用をdiazepam,nitrazepamおよびflurazepamのそれと比較した.1) open-fieldにおけるマウスの自発運動はlormetazepamの大量で抑制された.diazepamも類似の作用を示したがnitrazepamおよびflurazepamは逆にambulationを増加させた.2) methamphetamineの自発運動増加作用はlormetazepam,diazepam,nitrazepamおよびflurazepamによって増強された.3) ラットにおける抗confict作用はlormetazepamが最も強力であった.4) 嗅球摘出ラットおよびraphe破壊ラットいずれのmuricideもlormetazepamによって著明に抑制された.5) lormetazepamはdiazepamやflurazepamと同様にマウスの最大電撃およびpentetrazolけいれんを抑制したが,後者に対する作用がより強力であった.6)マウスにおけるlormetazepamのthiopenta1,etherおよびethanol麻酔増強作用はdiazepamやflurazepamより強力であった.7)rotarod法によるlormetazepamの協調運動障害作用はマウス,ラットいずれにおいてもdiazepamやflurazepamより強力であった.8)マウスのinclined screen法におけるlormetazepamの筋弛緩作用はdiazepamやflurazepamよりはるかに強力であった.9) lormetazepamは慢性電極植込みウサギの脳波を徐波化させ,音刺激,中脳網様体,後部視床下部刺激による脳波覚醒反応や光誘起反応を抑制し,また大脳辺縁系後発射も抑制した.これらの作用はdiazepamとほぼ同程度であった.以上,lormetazepamは質的にはdiazepamやflurazepamに類似した行動薬理学的・脳波学的作用を有するが,その作用は全般的にはdiazepam,nitrazepamおよびflurazepamのいずれよりも強力であった.
feedback
Top