日本薬理学雑誌
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モルモット横隔神経およびヒナ食道副交感神経活動におけるProstaglandinの関与
竹内 正吉矢ケ崎 修
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1985 年 86 巻 4 号 p. 261-268

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抄録

コリン作働性神経支配を受けている腸以外の組織におけるprostaglandins(PGs)の神経活動に対する作用を検討する目的で,モルモット横隔神経筋標本とヒナ食道副交感神経筋標本を用い,電気刺激による収縮反応とacetylcholine(ACh)放出に対するindomethacin(IND)とPGE2の効果を調ぺた,モルモット横隔神経筋標本において,IND(56 μM)は筋直接および神経刺激による筋収縮に影響を示さなかった,PGE2は,1 μg/mlの濃度でsubmaximalな強さの直接および間接刺激で生じた収縮を増強したが,supramaximalな強さの刺激による収縮には効果を示さなかった.横隔神経刺激時のACh放出に対して,IND(56 μM)は影響を与えなかったが,PGE2(10 ng~1 μg/ml)は高頻度(50 Hz)刺激時の放出を用量依存性に抑制した.また,低頻度(1 Hz)刺激時のACh放出を高濃度のPGE2は抑制する傾向があった.一方,IND,PGE2共にhigh-K+刺激時のACh放出には影響しなかった.ヒナ食道副交感神経筋標本では,IND(2.8~5.6 μM)は4例中2例において,0.017 Hzの神経刺激による筋収縮を増強した.この増強はPGE2 10 ng/mlにより回復した.しかし,1または10 Hz,5秒間の連続刺激で生じた収縮には影響しなかった.PGE2(10 ng/ml)では神経電気刺激による筋収縮は,一過性に抑制された.10 Hz刺激時のACh放出に対して,IND(2.8 μM)は有意な増加を生じた.この増加はPGE2 10 ng/mlにより拮抗された.PGE2(10 ng/ml)単独では,1または10Hz刺激時のAch放出は有意に抑制された.以上の結果より,PGはprejunctionalな作用(神経)とpostjunctionalな作用(筋)を有し,モルモット横隔神経筋とヒナ食道副交感神経筋両組織においては,PGE2は神経刺激時のACh放出に対して抑制的に作用しつつ,一方筋に直接作用し,その収縮を増すものと思われる.また,INDを用いた実験結果より,内因性PGsは運動神経終末より,自律神経終末の神経活動に対して,生理的重要性が高いように思われる.

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