日本薬理学雑誌
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Traxanox sodiumの炎症反応に対する作用
寺澤 道夫今吉 朋憲丸山 裕安倍 千之
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1985 年 86 巻 5 号 p. 329-340

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抄録

traxanoxは従来の急性および亜急性炎症モデルであるcarrageenin足浮腫,紫外線紅斑,6時間Evans blue-carrageenin(E-C)胸膜炎およびcotton pellet肉芽腫形成を抑制せず,in vitroで菌貧食による白血球からのprostaglandin E2およびslow reacting substance産生を阻害しなかった.一方,traxanoxはアナフィラキシー様反応を抑制し,24時間E-C胸膜炎の胸水量を減少させた.また,traxanox(100 mg/kg, p.o.)はdextran浮腫およびadjuvant arthritis(AA)ラットでのcotton pellet肉芽腫形成を抑制する傾向を示した.遅延型過敏症モデルに対して,traxanox(100 mg/kg, p.o.)はB. pertussisによる胸膜炎の滲出液の貯留および白血球の遊走を抑制した.Lewisラットを用いたAAに対して,traxanox(50 mg/kg, p.o.)はadjuvant接種後21日間の経口投与で抑制作用を示さないが,hydrocortisone(10 mg/kg, p.o.)およびindomethacin(0.25 mg/kg, p.o.)との併用では,これらの薬物の抗AA作用を増強した.Adjuvant接種前21日からの投与では,traxanox(50~100 mg/kg, p.o.)は用量に依存してAAを抑制した.一方,traxanox(100 mg/kg, p.o.)はモルモットでのconcanavalin Aによる遅延型過敏症類似皮膚反応を増強した.これらの結果から,traxanoxの炎症反応に対する作用態度はD-penicillamineやlevamisoleに類似することが明らかにされ,本化合物のリウマチ関節炎に対する臨床効果が期待される.

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