日本薬理学雑誌
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マウスにおけるプロリン特異性エンドペプチダーゼ阻害薬の抗健忘様効果
南里 真人金戸 洋
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1987 年 89 巻 6 号 p. 323-329

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抄録

先報の成績に基づき,vasopressinなど学習・記憶に関係するといわれている各種プロリン含有生理活性ペプチドの分解・不活性化に関与するプロリン特異性エンドペプチダーゼ(PPCE)に対する阻害薬の学習・記憶への効果を,水を強化因子とした明暗弁別Y迷路学習およびレバー押し学習と,一試行性step-through受動的回避学習実験について検討した.Y迷路学習実験では,1日の順化とその後5日間の反復テストによる明暗弁別摂水行動の習得までの経過を,摂水までの潜時と正解率を指標とし,また,レパー押しによる摂水行動学習では,2日間のマガジン訓練によってレバー押し摂水行動を習得させ,その後2日間にわたってこの行動を観察した.一試行性受動的回避学習実験では,明室から暗室に入った際に床グリッドから足ショックを与え,この1回の獲得試行によって習得した受動的回避反応の消失を指標に検討した.これらの各方法の条件を適当に設定することによって,マウスにおいても学習の経過と習得した行動の消失が観察可能で,また,電撃痙攣ショックあるいはscopolamine投与によって健忘モデルを作製することができた.この結果,検討した5種のPPCE阻害薬の中でin vitroでの阻害効果が最も強いZ-Pro-Pはすべての方法においても学習過程の促進と抗健忘様効果が得られた.また,Z-Pro-Pに次いで阻害効果の強いSuc-Pro-PもY迷路学習,一試行性steP-through受動的回避学習実験で有効であった.先報での成績と併せ,PPCE阻害薬に抗健忘様効果を認めるとともに,その作用がAVPの分解過程に作用する可能性を示唆した.

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