日本薬理学雑誌
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数種漢方処方の胃機能に対する薬理学的研究 (第3報)エタノールおよびアスピリンによる胃粘膜損傷の形成に対する黄連解毒湯,三黄瀉心湯,安中散および大柴胡湯の作用
高瀬 英樹今西 勝江三浦 治弓岡 栄三郎渡辺 裕司
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1988 年 91 巻 5 号 p. 319-324

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抄録
黄連解毒湯,三黄瀉心湯,安中散ならびに大柴胡湯のethanolおよびaspirinによって惹起されるラット胃粘膜損傷に対する作用を検討し,sucralfate,cimetidineおよび16,16-dimethl-prostaglandin E2(DMPGE2)の作用と比較した.1)黄連解毒湯は,25~250mg/kg,p.o.で,ethanolあるいはaspirinによる胃粘膜損傷を有意に抑制した.sucralfateは100mg/kg,p.o.で抑制傾向を,500mg/kg,p.o.でethanolおよびaspirin胃損傷を有意に抑制した.DMPGE2は0.1~5.0μg/kg,p.o.でそれぞれの胃損傷を有意に抑制した.2)三黄瀉心湯は,50mg/kg,p.o.以上でaspirin胃粘膜損傷を,250および500mg/kg,p.o.でethanol胃損傷を有意に抑制した,3)安中散ならびに大柴胡湯は,250mg/kg,p.o.以上でaspirin胃損傷を抑制し,500mg/kg,p.o.でethanol胃損傷の形成も抑制した.4)cimetidineは10~250mg/kg,p.o.でaspirin胃損傷を用量依存的に抑制した.ethanol胃粘膜損傷に対しては,10mg/kg,p.o.で抑制しなかったが,100および250mg/kg,p.o.で有意に抑制した.以上のように,黄連解毒湯,三黄瀉心湯,安中散および大柴胡湯はいずれも,胃粘膜損傷抑制作用を示し,潰瘍形成に対する予防または治療に有用な薬剤であることが示唆された.
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