日本薬理学雑誌
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TJ-8007 の薬理学的研究(第2報) 虚血性脳障害保護作用
後藤 和宏末川 守細谷 英吉
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1989 年 93 巻 4 号 p. 255-260

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抄録

TJ-8007(ツムラ続命湯)の脳機能保護作用を明らかにする目的で,数種の脳虚血モデルに対する作用を ifenprodil と比較検討した.また,作用機序解明の一環としてイヌの椎骨,内頸動脈血流量に及ぼす影響について検討した.両側総頸動脈(BCA)結紮によるマウスの脳虚血モデルにおいて,TJ-8007(0.3~3.0g/kg,p.o.)は累積死亡率の増加を抑制した.さらに,TJ-8007(3.0g/kg,p.o.)はBCA 結紮後のマウスの生存時間を有意に延長した.しかし,TJ-8007(1.0,3.0g/kg,p.o.)はBCA 結紮後のスナネズミの生存時間あるいは断頭後のマウスの gasping には影響を及ぼさなかった.ifenprodil(30mg/kg,p.o.)もTJ-8007 と同様に BCA 結紮後のマウスの脳虚血性致死に対する保護作用を示したが,スナネズミを用いた脳虚血モデルおよび断頭による完全脳虚血モデルでは作用を示さなかった.また,TJ-8007(1.0,3.0g/kg,p.o.)は麻酔イヌの椎骨動脈血流量を増加させたが,内頸動脈血流量に対しては影響を及ぼさなかった.これらの成績から,TJ-8007の脳機能保護作用には椎骨動脈の血流量増加に基づく脳循環改善作用が関与していることが示唆された.

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