日本薬理学雑誌
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頻尿改善剤 Propiverine hydrochloride およびその代謝物のモルモット摘出膀胱標本に対する作用
春野 明弘山崎 靖人三好 和久三宅 秀和土屋 勝彦小坂 光男永井 正則入來 正躬
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1989 年 94 巻 2 号 p. 145-150

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抄録

propiverine hydrochloride(P-4)および P-4 のヒト血中ならびに尿中の活性代謝物である 1-methyl-4-piperidyl diphenylpropoxyacetate N-oxide〔P-4(N→O)〕,1-methyl-4-piperidyl benzilate N-oxide〔DPr-P-4(N→O)〕および 1-methyl-4-piperidyl benzilate hydrochloride〔DPr-P-4〕の摘出モルモット膀胱標本に対する作用について検討した.P-4 は acetylcholine(ACh)用量反応曲線に対し10-6Mおよび10-5Mで右に平行移動を示し,10-5Mではそれに加えて最大収縮抑制作用を示した.P-4 の pA2 値および pD'2 値は,それぞれ6.36,4.52であった.P-4 の N-oxide体であるP-4(N→O)は,10-5M以上より最大収縮抑制作用,すなわち非競合的拮抗作用を示し,その pD'2値 は4.06であった.P-4の脱プロピル体である DPr-P-4(N→O)および DPr-P-4 はそれぞれ 10-6 から 10-4Mおよび10-7 から 10-5Mで右に平行移動,すなわち競合的拮抗作用を示し,その pA2 値はそれぞれ5.87,7.06であった.propantheline の pA2 値は,8.26 であった.100mM KCl 単一収縮に対しては,P-4 は10-6M以上より用量依存的な抑制作用を示し,その IC50 値は 1.8×10-5Mであり,その抑制作用の強さは terodiline(IC50値:1.1×10-5M)と同程度であった.一方,P-4(N→O),DPr-P-4 および DPr-P-4(N→O)の抑制作用は P-4 に比して弱く,IC50 値はそれぞれ >10-4M,1.3×10-4M,>10-4Mであった.Ca拮抗剤の verapamil の IC50 値は 1.9×10-6Mであった.P-4およびP-4(N→O)はCaの取り込み抑制作用を示した.以上の結果より,P-4は主としてCa拮抗作用を介する平滑筋直接作用を有し,P-4 の代謝物である P-4(N→O)は P-4 と同様にCa拮抗作用を介する平滑筋直接作用,DPr-P-4(N→O)および DPr-P-4 は抗コリン作用を有することが推定された.

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