1991 年 97 巻 5 号 p. 241-249
ラットに胃全摘,食道空腸吻合術(Billoth-II法)を施行して逆流性食道炎モデルを作製し,FOY-305の術後食道病変に対する効果をsodium alginate(AL-Na)およびcimetidineと比較検討した.本モデルでは術後5日目から食道潰瘍を認めたことから,被検薬は潰瘍発症前の術後2日目および発症後の7日目から投与を開始し,それぞれ,実験IおよびIIとした.その結果,実験IにおいてFOY-305(1000ppm)は,術後7日目および14日目に食道潰瘍の発生を有意に抑制した.一方,AL-Naは術後7日目ではFOY-305(1000ppm)と同等の抑制効果を示したが,術後14日目ではこの効果は減弱した.実験IIにおいては,FOY-305は術後21日目で著明な治療的効果を示し,病理組織学的にも食道潰瘍を抑制し,潰瘍部の上皮の再生を促進していた.また,FOY-305投与群では,術後の摂餌量,体重の増加率も対照群と比べて改善された.しかし,AL-Naおよびcimetidine(1000ppm)は術後21日目では効果を示さなかった.以上の結果は,FOY-305が胃全摘後の逆流性食道炎に対し明らかな抑制効果を有することを示している.