日本薬理学雑誌
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NIK228の胃酸分泌抑制作用の検討 ―Congo red散布法を用いて―
鹿児島 正豊星野 隆一島田 英世
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1991 年 98 巻 2 号 p. 99-111

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抄録

3-hydroxymethyl-2-methylimidazo〔2,1-b〕benzothiazole(NIK-228)の胃液分泌抑制作用の作用メ力ニズムについて,H2-受容体拮抗薬のcimetidineおよび抗コリン剤のatropineを用いて比較検討した.実験動物は,雄性Wistar系ラット(200~250g)を24時間絶食下で使用した,NIK-228は,100mg/kgの経ロ投与により,胃酸分泌量を有意に抑制した.またcimetidineおよびatropineは,それぞれ100mg/kgおよび5mg/kgの経口投与により,NIK-228と同程度,胃酸分泌量に対し抑制が認められた.そこでNIK-228,cimetidineおよびatropineのそれぞれ前述の用量を経口投与により前処置した後,1時間後に各種の胃酸分泌刺激剤を投与して実験を行なった.NIK-228は,histamine刺激に対しては,まったく胃酸分泌の抑制が認められず,gastrin刺激に対して軽度の抑制,また2-DGおよびbethanechol刺激に対しては,抑制作用が認められ,atropine様の作用を示した.しかし迷走神経切除ラットを用いたbethanechol刺激に対して,NIK-228は,胃酸分泌抑制作用を示さず,atropineとは異なった作用動態が認められた.一方cimetidineは,histamine,gastrin,2-DGおよびbethanechol刺激に対して,胃酸分泌の抑制作用が認められた.以上のことから,NIK-228の胃酸分泌抑制作用には,cimetidineのようなH2-受容体拮抗作用は関与していないと考えられる.さらにNIK-228がatropineと類似の作用動態を示したことから,一部迷走神経系を介する作用が考えられるが,迷走神経切除ラットを用いたbethanechol刺激において,NIK-228の胃酸分泌抑制作用が消失したことから,NIK-228の有する胃酸分泌抑制作用には,迷走神経上位の系に基づく抑制作用が関与している可能性が推察された.

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