日本薬理学雑誌
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コレステロール負荷家兎の実験的動脈硬化に対するNIP-200の抑制効果
坂下 光明中山 貞男北原 真樹水流添 暢智小口 勝司
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1992 年 99 巻 1 号 p. 37-43

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抄録

コレステロール負荷家兎を用いて,NIP-200(3,5-dimethyl-4,6-diphenyl-tetrahydro-2H-1,3,5-thiadiazine-2-tllione)の動脈硬化症に対する作用を検討した.NIP-200は,1%コレステロール飼料(HCD)に,0.1%(w/w)の割り合いで添加した混餌飼料として,1日1回100g/匹を与え,8週間飼育した.飼育期間を通じて,HCDおよびNIP群とも飼料摂取は,ほぼ完全であり,体重推移においても順調な増加を示した.血漿脂質においては,投与期間中,総コレステロール,遊離コレステロー,トリグリセライドおよびリン脂質については,HCD群とNIP群に差は認められなかった.一方,high density lipoprotein-コレステロール(HDL-C)は,1,2,4および6週でHCD群に比べて,NIP群で上昇傾向が認められた.大動脈脂質沈着面積の全面積に対する比はNIP群で,大動脈・弓部において低下傾向を示し,胸部大動脈においては有意(P<0.05)な低値を示した. さらに,動脈横断面の病理学的観察において,内腔面での内膜肥厚の広がり,内膜肥厚の程度および病変部における泡沫細胞の出現,弾性繊維の増生,脂肪性壊死のいずれについてもHCD群に比してNIP群で改善が認められた.NIP-200は,有意な血漿脂質の低下やHDL-Cの増加を伴わずに動脈硬化病変の進展を抑制した.従って,今回の結果から,動脈硬化の進展には,動脈壁におけるリボ蛋白代謝や平滑筋細胞の遊走・増殖等が重要な役割を担っている可能性が示唆された.

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